キングサーモン養殖事業順調 飼育観察充実へ大型水槽設置
update 2021/9/28 07:40
函館市が今年度から取り組んでいるキングサーモン(マスノスケ)の完全養殖技術研究事業が順調に進んでいる。研究拠点である市国際水産・海洋総合研究センター(弁天町)では10月にも、現在仮水槽で飼育中のキングサーモンを新たに設置した大型水槽に移動し、人工ふ化の実現に向けたDNA解析や遺伝資源の保存技術の研究を本格化させ、国内初となる純粋なキングサーモンの完全養殖技術の確立を目指す。
函館近海での漁獲量の減少が続く中、市は天然資源依存の漁業から育てる漁業への脱却を目指し、希少価値の高いキングサーモンの養殖事業に着手。今年度は4〜6月に南かやべ漁協管内の定置網で捕獲された天然キングサーモン56匹を入手した。死んだ個体44匹の卵と北大大学院水産科学研究院が所有する凍結精子との受精を試みたが、発眼は確認されなかった。現在は天然キングサーモン12匹と、北大大学院水産科学研究院所有の人工ふ化したキングサーモン13匹を同センター内の仮水槽で飼育している。
今後は新たに設置した大型水槽設備(10トン×2基、7トン×1基)にキングサーモンを移動し飼育を継続。同水槽は水温調節器や酸素発生器などを備え、海水と淡水のどちらの給水可能で、より充実した状況で飼育観察が可能となる。
また、2023年度から予定している海面での養殖試験に向け、浮沈式生けすの設置場所を選定するための海況基礎調査を、10月から市内4海域で実施する。市農林水産部は「地元漁業者と協力しながら速やかに調査を進めていきたい」としている。
順調に研究が進めば、26年度にも完全養殖が実現する可能性もあるが、同部では「天然のキングサーモンが安定的に入手できるか分からないので、今後の見通しについては未知数な部分も多い。ただ、事業化が実現すれば函館ブランドのキングサーモンとして高い付加価値が期待できるので、関係機関と連携しながらじっくりと研究を進めていきたい」と話している。
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