2018道南経済予測 日銀、財務事務所のトップに聞く
update 2017/12/31 08:21
2017年が幕を閉じる。昨年の北海道新幹線開業効果が一定程度持続するなど観光関連は引き続き好調を維持した一方で、水産加工業は昨年に続くイカの記録的な不漁の影響で苦しい1年となった。日本銀行函館支店の井上広隆支店長と函館財務事務所の石井克憲所長の2人に、函館経済の現状と来年の展望を聞いた。
海外の成長力取り込め 日本銀行函館支店・井上広隆支店長
北海道新幹線の開業2年目を迎え、ブームが一段落して利用者は減少しているものの、インバウンドや格安航空会社(LCC)の好調なども相まって函館の観光は引き続き高い水準を維持している。
来年、タイのLCC就航や若松地区クルーズ専用埠頭の供用が実現すると、さらなる上積みが期待される。ただ、LCCに関しては搭乗率が下がると早期に撤退するケースも少なくないため、函館側から利用するアウトバウンドの促進に向けた取り組みも重要になってくるだろう。
また、来年から再来年にかけて「箱館戦争150周年」を迎える。こうした歴史上のイベントを集客につなげるとともに、道南全体で観光客の回遊性を高め、滞在日数や消費額を増やしていきたい。
製造業については、今年、昨年とイカの世界的な不漁で原材料が高騰し、水産加工業では生産が減少するなど苦戦を強いられている。現在は、在庫の確保から採算性の確保に焦点が移りつつあり、一部には原材料構成の見直しや製品の量を減らす実質的な値上げに踏み切る動きもあるようだ。
今後の函館経済の活性化に関しては、海外経済の成長を地域経済にどう取り込んでいけるかが大きな鍵になる。少子高齢化などの影響で国内のマーケットが縮小する中、海外を見据えた製品の開発を視野に入れていくことも重要な課題だと思う。
特に、公立はこだて未来大学が研究を進めているAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)は世界的に注目されている分野でもあり、ビジネスとしての可能性も大きい。産学官が連携して地域の強みでもある「モノづくり」に磨きをかけ、外貨を稼げる新産業の発展に期待したい。
若者の地元回帰が重要 函館財務事務所・石井克憲所長
今年は北海道新幹線の開業1年後ではあったが、それなりに開業効果は持続していて、その効果は観光分野だけでなくさまざまな方面にいい影響を与えた。しかしながら最近では当初の開業効果が剥がれ落ち、元の巡航軌道に戻りつつある1年となった。
開業による大きな波は去り、通常ベースに戻ってきた。ただそうは言っても開業前に比べれば好調さは続いているといえる。道新幹線が開業したことで函館に対する関心が全国的に高まったことは、航空機やフェリーの利用客数をみてもわかるだろう。ただ一服感は間違いなくある。
函館の水産業をみると、スルメイカの大不漁が昨年から続いている。当地の製造業は水産加工業が中心であり、水産加工業のみならず製造業全体にも影響が波及している。しかしながら自然が相手であり、関係者が努力したからといって突然イカが戻ってくるというわけでもない。ただ函館はこれまでにもイカの大不漁を経験しながら乗り越えた過去があるので、今回も魚種転換などアイデアで現状を克服していくことに期待し注視している。
人口減少問題は全国的な問題であり、また当地にものしかかっている身近な課題だ。函館は魅力的な都市に選ばれるなど魅力的な街であるにも関わらず、年々人口が減り続けている。これは訪れたいという思いと、住み続けたいという思いの間にギャップが存在していることを表している。
函館は高等教育機関が充実しており、多くの若者が当地で学んでいる一方で、卒業し函館を離れる人も大勢いる。そうして外に出ていってしまった人たちが、もう一度函館に戻ってきて仕事ができる街づくりが重要であり、また空き家や空き地の活用も大事になるだろう。
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