車いすで全国ヒッチハイクの寺田さんが函館到着

update 2017/9/15 08:16


 ヒッチハイクをしながら全国各地を車いすで旅をしている寺田湧将(ゆうすけ)さん(27)=東京=が14日、函館に到着した。北海道では宗谷岬を目指して北上を予定。さまざまな出会いを通じて、「気軽に助けてと声を掛けて、気軽に後押ししてくれる社会になって」と願いを広める「HELPUSH(ヘルプッシュ)」というプロジェクトを展開中だ。

 寺田さんは1990年、愛知県生まれ。脳性まひで両足に障害があり、自力で歩くこともできるが、20歳の時から車いす生活を送る。大学在学時に英国留学をしたり、お笑い芸人を目指したことも。卒業後は新宿・歌舞伎町で「終電で帰宅するお酒が飲めない」ホストとして働いた。

 プロジェクトのきっかけは、都内の駅で階段を登るため、駅員に車いすを運んでほしいと頼むと、「管轄外」を理由に断られた経験を友人に話すと「通行人に助けてもらえば良かったのに」と言われたこと。「芸人やホストとして過ごす中で、人に『助けて』と言えなくなって、強がりの中で生きていたことに気付いた。僕だけではなく、すべての人が本音を言えるようになれば」と話す。

 「ヘルプッシュ」は「ヘルプ(助ける)」と「プッシュ(押す)」を合わせた造語。4月22日、東京・国立競技場駅前から旅を始めた。1カ月の3分の2を旅先で、残りは都内に戻り、8月までに中部、北陸の9県と山形県を回った。今回は、9月4日に秋田に入り、本州最北端の青森県大間町を経由して函館入りした。今月は20日に宗谷岬到着を目指している。

 旅の様子はSNSで発信。出発から245組が賛同して車いすを押してくれるなどした。ツイッターに現在地の地図を発信したら、迎えに来てくれた人もいた。「『車いすかどうかは関係なく、君なら乗せてもいいと思ったから』と言われたことも」と話す。

 津軽海峡フェリーで函館到着後、道内で初めて寺田さんを乗せたのは、東京理科大学大学院1年の中尾若菜さん(22)。車を1日好きなことに使ってもらう様子に密着する、テレビ東京(道内はテレビ北海道)の番組「車あるんですけど…?」の収録でヒッチハイカーを探している最中だった。中尾さんは同大学1年生の時、長万部キャンパス通学。道内でヒッチハイク旅行の経験があり、思い出の北海道で旅行者を車に乗せることを希望して函館を訪れた。中尾さんは「寺田さんは人に感謝することを大事にしているという印象」と話す。ロケの様子は、10月1日に放送予定。

 寺田さんは、15日は函館に滞在し、16日午前中に市内国道沿いから札幌に向けて、旅を再開する。「道行く人にも『ちょっと押して下さい』と声を掛けていきたい。3、4歳ごろ以来の北海道の大自然の中で、ヒッチハイクを楽しみにしている」と笑顔を見せる。

 ツイッター、インスタグラムは、@helpush_story

提供 - 函館新聞社

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