松前武家地跡でガラス玉が出土、アイヌ向け交易品か
update 2017/8/26 08:18
【松前】町豊岡の旧武家屋敷ごみ捨て場跡で19〜25日、弘前大学文化財論ゼミ(関根達人教授)の発掘調査が行われ、陶磁器、古銭など当時の生活をうかがわせる遺品のほか、穴のあいたガラス製小玉14点が発見された。関根教授によると武家地での出土例は過去になく「アイヌの人々との交易用に武家屋敷内で制作されていた可能性がある」としている。
発掘調査は、公益社団法人たばこ総合研究センターの助成を受けたプロジェクト「酒とタバコからみた蝦夷地の内国化に関する研究」の一環。発掘地は正行寺墓地裏手の48平方メートル、江戸時代には中堅武家の屋敷が立ち並んでいた一角。
今回発見されたガラス玉の大きさは7ミリ前後、青が12点、ピンクと緑がそれぞれ1点ずつ。アイヌの人々が珍重していた「タマサイ」と言われる首飾りに使われていたものによく似ている。同ゼミは、今回出土したガラス玉は遺跡年代から江戸時代後期のものと推定する。町教育委員会によると、町内での出土例は福山城下町遺跡など旧町人地で1点ずつ3例しかなく、まとまった数の発見は今回が初めて。
関根教授は「近世のアイヌは主に和人からガラス玉を入手していたが、生産地は不明で、主に江戸や大坂などで生産されたのではないかと思われていた。今回の発見はアイヌ向けガラス製品が松前で制作されていた可能性を示す」と話す。
関根教授がもうひとつ「注目すべき発見」とするのは「コンプラ瓶」と呼ばれる長崎で焼かれた徳利が大量に出土したことだ。コンプラ瓶は輸出用の酒やしょうゆを詰めていたもので「日本国内ではほぼ長崎、新潟などの開港地にのみ認められ、この徳利が松前で発見されたのは幕末の箱館開港との関係をうかがわせる」(関根教授)という。
今回の発掘ではこのほか、伊万里焼や瀬戸焼などの大椀や大皿、すり鉢や茶碗などの生活雑具に至るまで幅広く出土しており、割れたあと「漆継ぎ」や「焼き継ぎ」で丹念に補修した品も多く、物を大切に使っていたかつての武士の姿がうかがえる。
同ゼミは今後、ガラス玉などの出土遺物の分析を進め流通経路を明らかにするとともに、来年は旧町人地の発掘を行い、武家地との比較に取り組みたいとしている。
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