「きみの鳥はうたえる」函館公開まで1カ月 三宅唱監督、主演の柄本佑さんインタビュー
update 2018/7/25 06:59
函館出身の作家佐藤泰志(1949〜90年)の同名小説を原作とした映画「きみの鳥はうたえる」(三宅唱監督)が8月25日から、函館市民映画館シネマアイリス(本町22)で先行公開される。このほど同館で開かれた完成披露試写会で、舞台あいさつに立った三宅監督と主演の柄本佑さん(31)が函館新聞の取材に応じ、作品の魅力やロケ地となった函館の印象などを聞いた。
――どのような気持ちで撮影に当たりましたか。
柄本 以前から、長期の北海道ロケをしたいと思っていました。短期間ではその地域の空気が分からなくて、今回ほど「仕事をしたな」と思えたことはありません。
三宅 たくさん失敗して、いろいろ試したいとの思いから、時間はとにかく欲しかったですね。また、「映画は生き物」がゆえに、100点以上の力が出ることがあります。二度と再現できないものを作りたいという気持ちが強く、佐藤さんの物語がそう要求していた気がします。
――昨年6月の約3週間のロケを振り返り、函館市民との交流はありましたか。
柄本 撮影後に行った角打ちの酒屋のお客さん、宿泊したホテルのスタッフなど皆さんがやさしく接してくれて、私たちを受け入れてくれる懐の深さを感じました。酒屋ではお客さんが函館のおいしいものを教えてくれて、ホテルのカフェコーナーではリハーサルもさせてもらいました。そういった交流を通じ、函館のまち全体が役の「僕」を作ってくれたと思います。
三宅 僕は札幌の出身ですが、特段函館とのゆかりはありませんでした。同じ「道民」と言っても、札幌と函館では歴史や文化、気候も異なりますよね。その違いも広い北海道の面白さでもありますが、今回のロケを通して、改めて札幌との日の光の違いなどを感じ、とても新鮮でした。
――三宅監督が触れましたが、函館のまちの印象は。
三宅 函館は気候をダイレクトに感じられるまちですね。ちゃんと寒いし、ちゃんと暑い。海も近いため、風で海の匂いが運ばれて来て、風土を五感で感じやすかった。これは映画の「僕」にとって大事なことで、登場人物がまちの匂いを感じられるように作りました。
柄本 五感で感じやすいまちだと思いました。「僕」の役では割と五感で感じるという演技があり、「頭の男」というよりは「体の男」。函館ならではの「僕」になったと考えていて、現場がそういう風にしてくれました。僕自身が「僕」になっていくのを待ってくれて、このような現場はめったにないと思います。
――映画に映っていない時間も一緒に過ごすことが多かったということですが、柄本さんから見た三宅監督、三宅監督から見た柄本さんとは、どんな人ですか。
柄本 分からない、というのが正直な感想です。でも、お互い嘘はついていないと思います。現場は仲良く戯れているだけではなく、緊張感がありました。三宅さんには五感で見られている感じがしました。
三宅 普通の撮影とは逆で、私がみんなを信じてついていくという現場でした。佑は映画そのものみたいな人。完全に信頼しているからこそ作れた映画だと思っていて、映画を撮る前よりも佑を好きになりました。
――試写会を終えての心境は。
三宅 映画はいろいろな人の協力で出来上がります。多くの人に見てもらうこれから始まる気もしますが、ロケ地の函館で上映した今、初めて映画が完成したと実感しています。1年ぶりに函館に帰ってきて、エネルギーをもらいました。
柄本 あまり実感はないですが、一緒に映画を作った仲間が見てくれている感じ。全函館市民が関係者で、親戚に見てもらっている気持ちです。
――「きみの鳥―」の見どころと、函館市民にどのように見てもらいたいですか。
柄本 函館で戯れる2人の男と1人の女、プラス1人―となるくらいの距離感で見てもらえれば、面白さが倍増すると思います。僕自身、全スタッフが同じ部屋の中にいる感じがしていて、そのように画面に映ることは奇跡的なこと。市民の方々には、身を任せてその場所にいてほしいと願っています。
三宅 映画を見るというよりも、一緒に106分の時間を体験してもらいたいですね。映画館という空間で客席に身を任せ、見終わったら、見慣れた風景も違って見えるはずです。
◇
「きみの鳥はうたえる」 原作は佐藤泰志が1981年から連載し、佐藤初の芥川賞候補作。作品の舞台を80年代の東京郊外から現代の函館に移し、主人公の「僕」(役・柄本佑)と友人「静雄」(染谷将太)、「佐知子」(石橋静河)の3人のひと夏の人間模様を描いた。シネマアイリス開館20周年記念作品として制作され、佐藤作品の映画化は「海炭市叙景」(2010年)、「そこのみにて光輝く」(14年)、「オーバー・フェンス」(16年)に続く4作目。9月1日から全国公開。
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