故大河内さん所有の芸術作品を寄贈

update 2018/7/19 07:24


 2016年1月に80歳で亡くなった函館市の小児科医で、道南市民オンブズマン代表を務めた大河内憲司さんの妻・綾子さん(80)がこのほど、大河内さんが生前集めていたブロンズ彫刻などの芸術作品約85点を、ハンセン病元患者が生活する岡山県瀬戸内市の長島愛生園入所者自治会に寄贈した。ハンセン病患者の苦しみを理解し、「何か力になれれば」との大河内さんの思いをくみ取った。

 長島愛生園は瀬戸内海の長島島内にある国内最初の国立ハンセン病療養所。1930年に設立され、88年に「人間回復の橋」と呼ばれる橋が架けられるまでの約半世紀、長島は世間から隔絶された離島だった。薬で治癒するハンセン病はかつて「らい病」と呼ばれ、96年に国が強制隔離などをうたった「らい病予防法」を廃止するなどし、現在は元患者が島内で通常の生活を送っている。

 大河内さんは小児科医の傍ら、会員制演劇鑑賞会の運営再建や旧函館郵便局(現明治館)の再生など、芸術分野への関心も高く、自費で芸術作品を購入しては、綾子さんが経営していた市内のホテルに飾っていた。

 大河内さんの遺志を継ぎ、寄贈した作品は、欧州の彫刻家オーギュスト・ロダンのブロンズ彫刻「ジャン・ディール第二試作 カレーの市民部分」(1885年、高さ68センチ)や「バルザックの頭部」(90〜93年、同17センチ)のほか、19世紀前半に作られたアンティークのオルゴール、国内外作家の油絵などさまざまだ。

 6月19日に綾子さんが長島愛生園を訪れ、自治会長の中尾伸治さん(84)に贈呈した。現在作品を飾る場所を考えているといい、3月に新築された総合診療棟ロビーなどが候補に挙がっているという。

 綾子さんは「ハンセン病患者は当時、世の中から虐げられ、肉親との縁を切られて生活していたという。島から出られず芸術に触れることもなかったであろう方々の癒しになれば」と思いを託す。中尾さんは「想像以上に多くいただき、中には大変高額なものもあって驚いた。自治会の平均年齢は85歳と皆高齢で、外に出て芸術を見に行けない人たちにとって大変ありがたい」と感謝の意を示していた。

提供 - 函館新聞社

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