棒二森屋閉店、時代の流れ・寂しさ胸に市民受け止め

update 2018/6/30 07:22


 「長い間、お疲れさまでした」−。函館駅前の百貨店、棒二森屋の閉店日が発表された29日、80余年にわたり市民生活とともにあった「棒二さん」に市民から寂しさやねぎらいの声が聞かれた。今後の焦点となる跡地利用についても函館の玄関口の活性化につながる施設の誕生を願う声があった。

 流通最大手イオン(千葉市)傘下の中合(福島市)が正式発表した午後2時以降、本館やアネックス館の各入り口には小賀雅彦店長名で閉店日の決定を知らせる張り紙が掲示された。来店していた市内松川町の主婦(65)は「近くに住んでいる人には、衣食住すべてをまかなっている人もいるでしょう。残念ですね」と話した。

 閉店の可能性が浮上してから1年余り。人口減少が進む地方都市における百貨店経営を取り巻く厳しい現実は市民にも冷静に受け止められている。深堀町のサービス業、谷村夕実さん(28)は「最近は全国チェーン店もどんどん函館にオープンしているし、時代に取り残されないためには仕方ない流れ」とする。的場町の主婦、染谷景子さん(52)は「少し寂しいが、若い世代が函館に残ってくれるきっかけになってほしい。棒二さんには昔から家族ともども世話になり、いろいろな思い出がある。お疲れさまと言いたい」とねぎらう。

 江差町の主婦、松崎則子さん(66)は「『あそこにいくと、1軒で用事が済む』という便利な存在だった。最近は本屋が少なくなっていたので、また1店無くなるのかと思うと寂しくなる」と話す。学生時代は毎日のように足を運び、現在も食料品などを買いに月に1度は訪れている七飯町大中山の自営業、大森ひとみさん(39)は「せめて棒二の名前が忘れられないような配慮がある施設ができることを期待している」と話す。

 同町大川の無職、板谷順治さん(80)は中学校の修学旅行の帰りに、5階にあった映画館で名画「風と共に去りぬ」を見たのが思い出だ。跡地について「観光客相手だけでなく、景気回復を見込めるような町おこしをしないといけないのでは」と指摘する。道教育大函館校に通う女子学生(20)は「家から遠いのであまり利用しないが、函館コミュニティプラザ(Gスクエア)のような若い世代も集いやすい施設になってくれれば」と期待を寄せる。

 絵画や華道などの加盟団体が作品展示の会場として催事場を利用してきた函館市文化団体協議会(今井憲克会長)。昨年12月にはイオンの岡田元也社長あてに市民署名9000筆を提出し、同店の存続や展示会場機能維持を求めた。事務局は「棒二さんは対応も親切で使いやすい施設。閉店時期が決まったとなれば、利用してきた各団体が来年度の活動に向けて会場探しに動くと思う。昨年、提出した署名でお願いしたように(新施設には)我々の気持ちも反映してもらえれば」とした。

提供 - 函館新聞社

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