桜に願う平和 七飯の浅利さん、英国とウェブ対談
update 2025/7/9 07:25
英国と函館をウェブでつないだセミナーがこのほど行われた。「戦後80年―アウシュビッツ、原爆、日本の桜」と題し、在英のジャーナリストでノンフィクション作家の阿部菜穂子さんと、七飯町在住で日本を代表する桜の育種家の浅利政俊さん(94)が講師を務めた。
主催は英国ロンドンに本部を置く大和財団ジャパン・ハウス。6月26日に開催。阿部さんはロンドンから、浅利さんは函館YWCA(松陰町)内のカフェから発信した。約260人が参加。半数以上が英国で、日本を含めスペインやポーランドなどからも参加があった。
阿部さんは昨年、著書「The Martyr and the Red Kimono」を英国で刊行。日本語版が7月に「アウシュヴィッツの聖人を追いかけて―ある被爆者と桜守の物語」として岩波書店から刊行される。
同書には、アウシュヴィッツで殺害されたマキシミリアノ・コルベ神父、長崎の原爆を生き延びた小崎登明さん、そして浅利政俊さんの3人の足跡が描かれている。阿部さんは、日本の桜が3人の人生をつないでいることを追跡調査で明らかにした。阿部さんは桜を育てて、ヨーロッパに贈り続けてきた浅利さんを訪ねて昨年5月に来日、浅利さんの七飯町の自宅で著書を贈呈した。
阿部さんが著書で取り上げたコルベ神父は、第2次世界大戦中にポーランドのアウシュビッツ収容所で刑死。長崎で被爆した修道士の小崎さんはコルベ神父の長崎での布教経験を知って神父の伝記を出版した。コルベ神父の生き方に共鳴した浅利さんは、1980年代末にポーランドに420本のサクラを贈ったが、ソ連解体など東欧の政変でその後の状態は分からなかった。しかし、阿部さんが10回に及ぶポーランド訪問で、ストラホチナの修道院で紅豊、千島桜、深山桜の3本が現存していることが分かったという。
阿部さんは浅利さんに、「なぜこんなにたくさんの桜をつくってきたのか。桜を通じて子どもたちに何を学ばせようと思われたのか」などと問いかけた。浅利さんは「桜の命への責任感」と答えた。
手がけた品種を松前城公園に集め、子どもたちのクラブを作ってきたことについては「松前は山と海がつながっている自然環境、ブナなどから出る栄養が細目昆布などを育てる、プラスチックごみなどを除去して海をきれいにしていく意識を育てたいと思った」と語った。
浅利さんは桜研究家の顔のほか、第2次世界大戦中に北海道で起きた中国人や朝鮮人への強制連行、連合軍捕虜の実態を早くから発掘してきた戦史研究家でもある。
その動機を問われ、母親が12歳の浅利さんに「どんなことがあっても中国人や朝鮮人をばかにしてはならない、友達になりなさい」と言われたことを紹介。「戦後の調査で戦中には報道されてこなかったことを知り歴史を学び直す必要を感じたから」と話した。セミナーの参加者からは、浅利さんの話と生き方に感動したという感想が寄せられた。
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