イラン・イラク戦争での体験を基に小説「異邦の仔」が文庫化 函館在住の小説家西川司さん
update 2020/10/14 07:30
函館在住の小説家、西川司さん(61)が日雇いアルバイト先でイラン・イラク戦争に巻き込まれ、その実体験を基に2014年に出版した小説「異邦の仔(こ)」が文庫化され、実業之日本社文庫から8日に発売された。SNSで発売前から話題沸騰で、西川さんは「自分の代表作で幅広い世代に読んでもらえたら」と話している。
サブタイトルは「バイトで行ったイラクで地獄を見た」。物語は、西川さんが22歳の時、政府開発援助(ODA)関連事業で、イラクに出稼ぎに向かった時に経験した恐怖が下敷きとなっている。主人公の放送作家が都内であった電車爆破事件から、過去の記憶として約30年前のイラクでの出来事が展開される。小説家人生を懸けた単行本執筆時は、思い出したくない仲間との死別など悲惨な光景を思い起こすあまり、寝られない日も多い中でペンを走らせたという。
今年の夏、インターネットで、アルバイト時のエピソードを紹介する欄にイ・イ戦争下で働いたことを基にしたのが「異邦の仔」と発表した。すると「体験はウソだ」などと書き込まれ“炎上”したこともあったが、実際にあった作戦上の空爆などを証明する第三者も現れ、事実と認識されると単行本が話題に。「ネットで中古が1万円以上になって驚いた」と西川さん。待望の文庫化が決まり、主人公を「立花」から「俺」とするなど、サスペンス色を濃くした。
本の帯は「3カ月で300万円。それは人生最悪のアルバイトだった。」。西川さんは「コロナ禍でバイトを探す人が多い中『このバイトとは一体なんだ』と興味を示す流れもあったかもしれない」と分析する一方、「ODA事業など、自分が伝えたい現実を詰め込んだ。誰もが無関係でないと思う」と強調する。
384ページ。780円(税別)。全国の主要書店で発売中。
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