佐藤泰志原作「草の響き」映画化 シネマアイリス5作目
update 2020/10/11 07:40
函館市民映画館シネマアイリス(本町、菅原和博代表)は10日、函館出身の作家、佐藤泰志(1949〜90年)の小説「草の響き」を原作とした映画の制作を発表した。10日は佐藤の没後30年の命日で、同館が手掛ける映画は5作目。「フレンチドレッシング」(97年)でデビューした斎藤久志監督(61)がメガホンを取り、11月上旬に全編を函館で撮影、2021年の公開を予定している。
同館は、10年の「海炭市叙景」(熊切和嘉監督)を皮切りに、「そこのみにて光り輝く」(14年、呉美保監督)、「オーバー・フェンス」(16年、山下敦弘監督)、「きみの鳥はうたえる」(18年、三宅唱監督)と佐藤泰志原作の4作品を函館発信映画として送り出してきた。
「草の響き」は79年に書かれた佐藤泰志初期の短編で、「きみの鳥はうたえる」(河出文庫)に収録。親友の研二のサポートを受けて精神科に通院する主人公の「彼」は治療のためのランニングを欠かさない。路上で出会い心を通わすようになった若者ノッポ≠ェある日から姿を見せなくなる−といった筋書きで、作品の舞台は現代の函館に置き換える。
今作も企画・製作・プロデュースを務める菅原代表(64)は「没後30年と『海炭市叙景』から10年となる今年、映画を作ろうと考えていた」と話す。1月には監督へのオファーや脚本の準備を進めていたが、新型コロナウイルスの流行は映画業界全体も直撃した。
同館も4〜5月に1カ月以上休館したが、この間、全国のミニシアターを応援する基金からの支援や、再開後も多くの励ましが寄せられ、菅原代表は「映画ファンの思いが伝わってきた。できることは映画を作ることだと思うようになった」とする。
斎藤監督は佐藤作品を読み込み、今月も11日までの日程で市内各所で撮影候補地を探している。菅原代表は「私と同世代の斎藤監督なら佐藤泰志の世界観を撮れるとオファーした。原作の時代と現在のコロナの時代がどこか重なるところがある。これまでの佐藤作品とは毛色の違う作品になると思う」と話している。
斎藤久志監督コメント 現在手に入れられる佐藤泰志作品を全て読んで、まだ肌寒かった6月の終わりに函館に行った。短い滞在期間だったが、ちょっとだけ町が見え、人が見えて来た。そして佐藤泰志が生きていた時代と今という時代の差、「時間」が見えて来た。佐藤泰志の小説「草の響き」は、主人公が走る話だ。だから僕らは函館の町を走る。そこから何が見えて来るのだろうか。さて、これから僕は古くからの仲間と新しい仲間を連れて再び函館の地に立つ。佐藤さん、あなたに逢うために。
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