胆振東部地震2年/災害に備え地域連携を 被災地支援の医療従事者に聞く
update 2020/9/6 07:59
2018年9月6日に発生した胆振東部地震は、医療福祉の現場での災害対策に多くの教訓を残した。ブラックアウトによる医療現場の混乱を経験し、震度7を記録した胆振管内厚真町で被災者の支援活動にもあたった精神保健福祉士、山村哲さん(40)=なるかわ病院=、佐久間裕さん(27)=函館渡辺病院=は「普段から地域間・関係者間の連携を強めておくことが、もしもの時の対応に直結する」と強調する。
佐久間さんは「事前の防災マニュアルでは大規模停電は想定外。電力が復旧した後も混乱は長く続いた」と当時を振り返る。通院患者と連絡がとれなくなり、先の見えない異常事態に精神状態が悪化する患者も少なくなかったという。
山村さんの勤務する病院では発電機の稼働時間が2日分しかなく、停電の長期化に備えて近隣の農家から発電機を借りる段取りをつけた。結果的には発災翌日の夜に電力が復旧したことで病院内の発電機で間に合ったが、日頃から近隣住民と協力体制を築いていたことが功を奏した。
山村さんと佐久間さんは被災から3カ月後の18年12月、所属する北海道精神保健福祉士協会道南ブロックからボランティアとして厚真町に派遣されるが、この時の仕事は体育館からの荷物運び。まだ被災から時間がたっていないこともあり、精神保健福祉士の専門性を生かした支援活動はできなかった。
厚真町では社会福祉協議会などが「災害ボランティアセンター」を開設し、全国からボランティアを受け入れるとともに、町民全戸を巡回して健康状況などの把握にあたった。山村さんは翌19年1月、再び厚真町を訪れ、学生ボランティアらとともに全戸訪問支援に参加した。
町内には土砂崩れで大被害を受けた地区がある中、比較的被害の少ない地区に住む人々はすきま風が吹き込む家でも我慢せざるを得ない状況にあった。被災者たちは「もっと大きな被害を受けた人もいる中で、自分のつらさを表現するのがはばかられた」と漏らし、不眠や焦燥感などに悩む人も多かった。「地元の人に話せないことを吐露できた」といった声もあったという。山村さんは「函館で同様のことができるかどうかは分からないが、厚真町の各戸訪問はとても良い取り組みだったと思う」と振り返る。
山村さんは現在、日本精神保健福祉士協会の災害支援体制整備委員として、都道府県をまたいだ災害支援体制の構築に取り組む。胆振東部地震から2年が経ち「北海道では被災経験が風化しているのでは」と危惧を抱きながらも「普段から災害に対しどう構えるのかを考えながら、関係機関、地域間の連携を広げていきたい」と考えている。
精神保健福祉士=精神障害者に対する援助をはじめ、メンタルヘルスへの対応にあたる国家資格。
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