道南35年ぶり酒造り始動 七飯の箱館醸蔵、新酒蔵建設進む
update 2020/9/1 06:32
【七飯】七飯町大中山1で新たな酒蔵の建設が進んでいる。箱館醸蔵(冨原節子社長)が新規参入し、醸造責任者の杜氏(とうじ)に国稀酒造(留萌管内増毛町)で杜氏兼製造部長を務めた東谷浩樹さん(52)を迎え、来春からの販売を目指す。道南で35年ぶりの日本酒造り復活に向けたプロジェクトが始動した。
箱館醸蔵は、酒造りを中止した岡山県の酒造会社から事業を継承し、昨年12月に酒造免許を有する企業になった。総事業費は5億5000万円で、北洋銀行、道南うみ街信用金庫、日本政策金融公庫が協調融資し、国の補助金も活用する。
新たな酒蔵は8月17日に工事着工し、鉄骨造2階建て、延べ床面積724平方メートル。来年2月に建物が完成し、醸造を開始する。3月下旬〜4月上旬に最初の商品が出来上がる見込み。清酒生産量(平年ベース)は年間100キロリットルを目指す。
原料の酒米は、七飯町内の農家5戸が「吟風」「彗星」を作付け、来年度以降は「きたしずく」も生産。玄米ベースで年90トンを使う予定だという。横津岳の伏流水を敷地内の井戸からくみ上げて使用する。
東谷さんは8月16日付で入社。十勝管内足寄町出身で、函館ラ・サール高校、帯広畜産大卒。北の誉酒造(小樽)、札幌酒精工業、国稀酒造での勤務を経て、2013年10月に国稀酒造の杜氏となり、豊富な知見を持って箱館醸蔵の立ち上げに参加を決めた。帯畜大卒の現役杜氏は、東谷さんを含め道内に3人いる。
全国新酒鑑評会で金賞に輝くなど好成績を収め、名実ともにこだわりの地酒を誕生させるけん引役となる。東谷さんは「七飯の気候風土を生かし、箱館醸蔵に関わる人たちの熱い思いをのせた酒を造りたい。うま味豊かな『淡麗旨口』の酒を目指す」としている。
同社は酒造りにあたり、公立はこだて未来大との共同研究も進める。AI(人工知能)を活用し、杜氏が長年の経験と勘で行っていた作業のデータを取り、可視化するなどAIと協調しながら酒造りを研究する。
道南では1985年3月に七飯にあった日本清酒の工場が製造をやめ、酒蔵がないエリアだった。今回は道内14番目の酒蔵となる。
箱館醸蔵は「100%地元のコメと水を使った酒は道南初。酒米も高品質のものができており、おいしい酒が期待できる」としている。
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