函館在住の小説家、西川司さんが迫真の長編警察小説出版
update 2020/7/26 07:24
函館在住の小説家、西川司さん(61)の6年ぶり新作で長編警察小説「消えた女 北海道警 鷹(たか)狩り刑事(デカ)」(コスミック出版)が発売された。北海道で難解に展開する捜査が書きつづられ「街並みの描写は顧慮した。ぜひ地元の皆さまに読んでもらえれば」と話している。
西川さんは旧尾札部村(現函館市)生まれ。2000年に「三日月の輝く夜は」(講談社青い鳥文庫)で小説家デビュー。20代から東京を拠点に放送作家、脚本家として活躍していたが、その直前に政府開発援助(ODA)関連事業でイラクに出稼ぎに向かった時にイラン・イラク戦争に巻き込まれ、14年にその実体験を基にミステリー小説「異邦の仔(こ)」(講談社)を発表するなど、約20冊を出版している。
11年から函館で執筆活動をしている。警察小説は9冊目で、10年に陣内孝則主演のテレビドラマ「刑事の十字架」の原作を手掛けるなどヒット作は多数ある。
今回の作品は、昨年12月に小樽市在住で長い付き合いのある出版関係の編集者に物語の構想を話した時「絶対面白い」と後押しされたことがきっかけという。
主人公は北海道警の刑事、鷹見健吾。激しい捜査で「鷹狩り」と言われるが、捜査を始めた殺人事件の被害者女性は、ある病院で起きた医療ミスに関わっていた疑いがあった。鷹見は狙いを定めた病院の院長夫人が失踪した自分の妻とそっくりであることを知り、過去の悲劇が錯綜(さくそう)、そして絶望と希望の捜査が続き、怒とうのヤマ場を迎える。西川さんは「一気に読めたという感想をいただいている」と話す。
編集者からは「北海道の冬や雪という厳しい自然の中で、刑事が厳しい捜査をすることが絵になり、全国の人に好まれる」と支持されたとし、札幌、旭川、函館などを舞台にした。表紙の写真に登場する摩周湖は「重要なシーン」とする。
執筆中に新型コロナウイルスの感染が拡大。その影響で“巣ごもり生活”が続き、不況だった出版界がやや上向きになったことを追い風と見て、初版ながら1万部を発行。「またテレビドラマになれば、北海道を知ってもらえる機会になるかも」と笑顔を見せる。
児童文学として出版した自伝小説「向日葵(ひまわり)のかっちゃん」が17年に東京、18年に函館で舞台化された。「(舞台が)自分の花道だと思っていたが、まだ小説を書いてほしいという声をいただき感謝している。(執筆活動の)起爆剤にしたい」とさらなる名作を生み出す意気込みだ。
352ページ、文庫判、670円(税別)、全国の書店で発売中。
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