フコキサンチン春先多く 道南産海藻「アカモク」研究成果
update 2020/6/8 07:02
道南産海藻「アカモク」に含まれる健康成分「フコキサンチン」は春先に多く夏に向かって減り、逆に食感の特徴である粘りは春に少なく夏に向けて増えていくことが、道立工業技術センター(函館市桔梗町)と、海藻の一次加工を行うベンチャー企業「北海道マリンイノベーション」(函館市弁天町、布村重樹社長)の研究で分かった。栄養機能性を訴求する場合は4〜5月、食品特性として粘りをアピールする場合は5〜6月が収穫の適期としている。
アカモクは日本各地の浅瀬に繁茂し、粘りのある食感で東北では食用にされる。2013年に北大大学院水産科学研究院の宮下和夫教授(食品化学)=現在は帯広畜産大特任教授=の研究成果で、函館産アカモク由来のフコキサンチンを利用したサプリメント「フコキサンチン1000」を商品化。アカモクを食べると抗肥満や糖尿病予防に効果があることが知られ、漁業現場で「厄介な存在」として敬遠されてきたアカモクを食品として有効利用する産学官の活動を続けてきた。
今回の研究では、フコキサンチンと粘りの季節変動を分析し、適切な収穫時期を判定した。フコキサンチンと粘りを測定したところ、成長過程の早い時期(4〜5月)にはフコキサンチン含有量が高く、粘りは低かった。一方、成熟に伴い5〜6月にはフコキサンチン含有量が減少し、粘りは増加。用途に応じて収穫時期を調整でき、付加価値の高い製品を供給できることが分かった。
また、アカモク原藻のボイル処理前後でフコキサンチン含有量を測定。その結果、ボイル処理でフコキサンチンは減少せず、逆に4割程度増えた。水溶性成分が流出し、フコキサンチンが凝縮されたためと考察した。札幌医科大の研究では、健康な日本人成人男女を対象にした試験でアカモク由来のフコキサンチンについて、1日2ミリグラムを8週間摂取したところ、血糖コントロールの指標「ヘモグロビンA1c」を改善することが報告されており、アカモクのボイル加工処理品を1日2グラム(乾物換算)、生食だと20グラム程度食べれば、フコキサンチン2ミリグラムに相当する。
今年3月には、道南産アカモクを使い、カネリョウ海藻(熊本県)がフコキサンチンを摂取でき、粘りも重視したボイル加工品(生食タイプ)を開発。ヘルシーDo(道食品機能性表示制度)の認定を受けた。
同センターの鳥海滋研究主査(47)は「函館でも複数の水産加工業がアカモクの製品化に興味を示している。将来は多くの企業にアカモクを供給し、製品を全国展開したい」、道マリンイノベーションの布村社長(59)は「昨年は福島町だけだったが、今年は福島、乙部両町で収穫した。収穫適期などが分かったので、供給量を増やしてほしいとの声に応え、健康食品としてアカモク産業を盛り上げたい」と話している。
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