作家と作品に光当て10年 函館の文芸誌「視線」 記念特別号完成
update 2020/4/7 07:21
函館の文芸同人「視線の会」は文芸誌「視線」の第10号となる創刊10周年記念特別号を発行した。編集長で元市文学館館長の和田裕さん(73)は「道南、函館の文学に光を当てるような作品、作家を掘り起こしたいと意識し、発行を続けて10年。記念号にふさわしい内容になった」と話している。
巻頭詩は客員同人で詩人の麻生直子さんが「ノルマンディーホテル」を寄せた。評論では、同じく客員同人の近藤典彦さん(国際啄木学会元会長)が「啄木最後の日々−貧窮・結核・予言・創作・佳き人たち」と題して啄木の最晩年の姿を追った。また、水関清さんによる「復元『悲しき玩具』収載歌一覧・付表」は、市中央図書館発行の「函館市民文芸第59集」の入選作と合わせて読むことで、啄木の推敲過程への理解が高まる。佐藤和範さんは「砂山影二の生涯」と題し、20歳で自ら命を絶った大正期の歌人にスポットを当てた。
小説は7人が執筆。和田さんは「現代の人間の存在意義を多角的に捉えた作品がそろった」と話す。このほかにも詩歌、詩画、紀行文、随想と幅広いジャンルの作品を取りまとめた。
同誌は1980年に創刊した同名の文芸誌を2010年に復刊し、以後、毎年発行を続けてきた。記念号の編集を終えた和田さんは「地方に生きている人々が日々の生活の中で、文学の目で掘り下げていくことに、地方で文芸誌を出すことの意義があると考えている。これからも函館に根ざした雑誌であり続け、ゆかりのある人たちに声を掛け、厚みを付けていきたい」と話している。
A5判、202ページ。250部発行。一部500円で、川原町の三省堂書店で販売。問い合わせは和田さん(0138・32・6844)へ。
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