須藤隆仙さん死去 郷土史関係者らから惜しむ声

update 2018/12/20 07:26


 函館市船見町の浄土宗称名寺住職で、郷土史研究者としても知られた須藤隆仙さんが12日に死去した。89歳だった。仏教史研究を入り口にして郷土との関わりや世界の宗教にも研究の幅を広げ、函館、道南地域の埋もれた歴史や風俗にも光を当てた。郷土史界の大家として知られた須藤さんとの突然の別れに、交流を持った多くの関係者から惜しむ声が相次いでいる。

 須藤さんは1929(昭和4)年、北斗市(旧上磯町)出身。大正大学仏教学部卒業。仏教史研究に早くから打ち込み、箱館戦争関連をはじめ、郷土史研究に関わる著書も多数残した。2004年には古今東西の宗教関連用語1万5000語を収めた「世界宗教用語大事典」をまとめあげるなど、その研究意欲は尽きることがなかった。

 ■驚異的な仕事された

 函館の歴史的風土を守る会(歴風会)の会長で道教育大名誉教授の佐々木馨さん(72)=人見町=は「若い頃から念仏仏教の北方地域への伝播を念頭において研究をスタートされた。丹念に仏教史や宗教史をくまなく研究された。道南、函館にとどまらず、日本全体にとっても驚異的な仕事をされた」と話す。さらに「市の文化財保護審議会の委員として一緒に仕事をしたが、文化行政についてもアドバイスができる有能な方だった」と故人を悼んだ。

 ■答弁代わってくれた

 称名寺は、高田屋嘉兵衛一族の墓があり、7代目、故高田嘉七さん(享年79)も眠る菩提寺。嘉七さんの次女で新潟市在住の菜々さん(40)は、「父と須藤さんは大学時代からの付き合いがあり、北方歴史資料館(休館中)の開設や、私たちが高田屋の質問を受けた時に代わってお答えいただいた。お世話になったことに心からお礼申し上げたい」と話した。

 ■面倒見てもらった

 境内には土方歳三らの供養塔があるなど、箱館戦争ゆかりの寺院としても知られる。人物伝執筆などで、親交を持った北海道史研究協議会渡島地区幹事の近江幸雄さん(82)=白鳥町=は「20代後半からずっと面倒を見てもらった。講演ではユーモアたっぷりに退屈させない楽しい話しぶりで人気があった。これからは若い人が須藤先生を目指して、郷土史の研究を進めてほしい」と願った。

 ■半世紀交流「残念」

 歴風会相談役で上磯地方史研究会の落合治彦さん(82)=北斗市=も交流は半世紀以上に及ぶ「昭和34(1959)年に上磯で郷土史研究を始めたころから目をかけてもらい、同じ上磯出身ということもあってめんこがって(かわいがって)もらった。もう一度元気になってくれると思っていたので本当に残念」と話す。

 ■疑問点教えてくれた

 箱館歴史散歩の会を主宰する中尾仁彦さん(76)=日吉町3=は須藤さんの郷土史講座受講を契機に本格的に研究に取り組んだ。会の活動50回を迎えた10年12月には須藤さんを招いて記念公演を開いた。中尾さんは「疑問点があるときには全部教えていただいた。最高の知識を持ち、しゃべって良し、書いて良しの両刀を持った郷土史家はいない。多くを勉強させてもらいました」と別れを惜しんだ。

提供 - 函館新聞社

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