おもてなし 市民が奮闘 客船乗客に好評
update 2015/10/5 10:23
港町・函館に華やかに彩るクルーズシーズンも最終盤を迎えた。今季は9月30日までに延べ15隻の豪華客船が寄港。毎回、関係機関や団体が協力して工夫を凝らしたおもてなし活動を展開しており、多くの市民がさまざまな形で函館港の魅力向上に一役買っている。
9月29日早朝、港町埠頭(ふとう)の岸壁に向かう「サファイア・プリンセス」のそばで、市の港務艇「つつじ」がカラー放水で歓迎した。巨大な船体は偶然にも上空に架かった大きな虹のアーチをくぐり、岸壁で待機していた観光バスの運転手らも思わぬ光景に声を上げて喜んだ。
同船は今年3隻目の初寄港船。函館からは特別史跡・五稜郭跡を中心に街の景色を彫り込んだ木製の盾が記念品として贈られた。記念プレート贈呈は世界の港で行われる慣例で、世界中を旅した証として、船内の通路などに飾られる。船側からの返礼品としては船体模型が贈られる場合が多い。
一方、この日の西埠頭には「シルバー・シャドー」が2年ぶりに寄港。観光に向かう乗客を黄色の法被を着た市民団体「カムカムの会」のメンバーが「いってらっしゃい」と見送った。
同団体は、池見石油元会長の故石塚與喜雄さんが15年以上前に自主的に始めた取り組みで、今でも客船寄港時には毎回10人前後の会員が参加する。「函館にようこそ」「おはようございます」などと声を掛けるシンプルな活動だが、国内外の乗客たちを必ず笑顔にさせることができる。横山悦朗さん(74)は「到着時の印象を少しでも良くしたいと始めたこと。反応があるから活動も続けられる」と話す。
国内最大の豪華客船「飛鳥II」が寄港した30日には、ききょう幼稚園の園児や遺愛女子高校生徒ら大勢の市民が港町埠頭に集まった。先代「飛鳥」時代からクルーや乗客の評価が高い「函館名物いか踊り」での見送りセレモニーで、船が遠く離れるまで、船上と岸壁で踊りが続いた。園児たちが「また来てね」と声を上げると、乗客は「ありがとう」の大合唱で応えた。
船上と岸壁の一体感を生むいか踊りは、船会社側から実施を要請されるケースも多く、グルメや観光名所だけではない寄港地としての函館を印象づけるイベントとなっている。
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