TPP 譲歩許さぬ、道南農家ら不安
update 2015/8/1 10:45
大詰めを迎えたTPP(環太平洋連携協定)交渉で、日本が農業分野で譲歩する見通しが強まったことについて、道南の農家からも将来の経営不安を懸念する声が広がっている。主食用コメや牛肉の輸入増加により、再生産できなくなる恐れがあるからだ。現場は農産物5項目を関税撤廃の例外とするとした国会決議を守り、粘り強く交渉を行うよう政府に訴えている。
TPP交渉は7月29日〜1日(日本時間)に米ハワイで閣僚会合が開かれ、今回で大筋合意を目指すとされる。日本は各国と個別に関税の扱いをめぐって協議を続けている。道南でも関心が高いコメは米国から7万d超の無税輸入枠を設けるほか、牛肉は現行38・5%の関税を15年かけて段階的に10%程度まで引き下げる方向と報じられている。
北斗市米穀振興会会長の小山内吉美さん(63)=同市開発=は「日本が主張した米国から5万dでも多いのに、7万d超とはあぜんとするばかり。実現すれば稲作農家には大打撃で、コメ作りの先行きが見えない」と話す。
「譲歩するなら国会決議違反だ」。こう語気を強めるのは同市清水川の森隆志さん(50)。最高の「特A」評価を受けた道南ブランド米「ふっくりんこ」を中心にコメ15fを作付ける。「輸入米が大量に流入すれば、ブランド米でも影響は避けられないだろう。価格面で競争できないのは明らかで、品質や安心感で勝負するしかない」という。
厚沢部町稲見でコメ12fを栽培する佐々木宏さん(62)も、一次産業が主体の桧山管内への影響を懸念する。「国が掲げる地方創生に逆行する動きで、輸入増で農業地帯は疲弊する」と指摘する。
輸入牛肉は、酪農家の収入を支えるホルスタイン種の雄牛と競合するため、打撃が大きい。七飯町軍川で搾乳牛75頭、育成牛75頭を飼う小森久司さん(64)は「生産者乳価の値上げがあったものの、輸入飼料や生産資材価格が高止まりしており、個体販売が堅調なので経営を継続できている。雄子牛の価格下落への不安が募るばかり」と表情を曇らせる。
来年夏の参院選への影響について、渡島管内のある農家は「TPP交渉結果によっては、農村票が自民党から離れていくかもしれない。ただ、選挙はあくまで候補を見て判断するので、影響は限定的だろう」とみる。
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