江差の90歳杉野さん自転車イカ売り

update 2015/7/5 10:23


 【江差】町内で唯一、自転車でスルメイカの行商に励む杉野悦男さん(90)=姥神町=の“操業”が4日、始まった。「イガ、イガ」と声を張り上げるスタイルは半世紀変わらず、江差の夏の風物詩。90歳を機に引退宣言していたが「お客さんは少ないけど、イカを待っている人がいるから頑張る。今朝は調子が良くて上り坂も自転車で大丈夫だった。これで自信がついたよ」と現役続行の構えだ。

 杉野さんは江差生まれで、行商は20代後半に両親の水産加工業の足しにと始めたのがきっかけだ。10年ほど前に73歳で亡くなった妻のサダさんと一緒に早朝のイカ売り、昼間もホッケやスケトウダラをリヤカーに積み、砂利道の中を厚沢部町まで売り歩いて家族の生計を立ててきた。

 現在はホッケのすり身づくりもしながら、自宅近くの港で新鮮なイカを見極め「本当に生きのいいものが手に入らなければその日は休む」と一切妥協しない。

イカ漁の時期になると船が漁港に帰ってくる度に足を運ぶという。今季は悪天候と不漁で、行商の開始が2〜3週間ずれ込んだ。

 4日は午前3時半から漁港で品定めし「お客さんが待っているし、(自分の体も)動かしたいから」と杉野さん。氷詰めの発泡スチロール3箱にイカを並べて自転車の荷台に積み、同6時半に旧JR江差駅前を出発。前かごのマイクスピーカーに電源を入れたが「昨日、チェックしたときスイッチをつけたままだったから、今朝電池が切れていた。だから今日は地声でやった」と笑う。

 杉野さんの行商を毎年心待ちにする町民も多く、この日も玄関先で手を挙げて呼ぶ姿があった。「本当にイカを買う人が少なくなったけど、小遣い稼ぎに今年も頑張るべさ」ときっぱり。杉野さんの行商は11月ごろまで続く。

提供 - 函館新聞社

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