「大間」安全審査を申請 建設中は初 函館市「遺憾」
update 2014/12/17 10:18
電源開発(東京)は16日、青森県大間町で建設中の大間原発の稼働に向け、新規制基準への適合審査を原子力規制委員会に申請した。建設中の原発による申請は、新基準施行後初めて。同社は審査を経て、2021年度中の運転開始を目指すとしている。同社と係争中の函館市は「遺憾」と反発した。
申請では、基準地震動を従来の450ガル(加速度の単位)から650ガルに引き上げ、想定する津波の最大値(基準津波)も現行の4・4bから6・3bに見直す。新基準を踏まえた安全強化対策工事費は約1300億円としている。
審査期間を1年程度と想定、2020年12月に工事完了し、試運転を経て21年度中の運転開始を目指す。同社は「今後規制委の審査に適切に対応し、自主的な安全対策などを進め、一層の安全性向上を不断に追求していく」としている。
同原発はウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を段階的に燃やし、最終的に全炉心に装荷する計画。2008年5月に着工、11年の東日本大震災で工事を一時中断したが、12年10月に再開している。津軽海峡をはさんで同原発から最短23`に位置する函館市は今年4月、建設差し止めを求め、同社と国を相手に提訴している。
市は「電源開発はいまだ住民の不安に対する責任を果たそうとせず、稼働ありきとして設置変更許可の申請をしたことは誠に遺憾。今後も裁判を通じて建設差し止めを求める」とコメント。住民訴訟を起こしている大間原発訴訟の会の竹田とし子代表は「大間はMOX燃料を全炉心に装荷するので、被害面積はウラン使用の原発に比べて4倍になる。ほとんどの函館市民や道南住民は逃げることができない。住民への説明は電源開発の義務」と指摘している。
一方、大間町の金沢満春町長は「ようやく申請の日が来たという思い。原発を誘致し、推進してきた町にとっては歓迎すべきこと」と話した。
原子力規制委員会は函館市との裁判にかかわらず慎重に審査する方針で、フルMOXの商業炉は世界初となることから、審査が長引く可能性もある。 田中俊一委員長は11月19日の会見で、フルMOXに関し「昔計画を立てたから、そのとおりに進めなければいけないということもないのだろう」と言及。さらに「MOXの使用済み燃料を再処理するための新たな処理工場を造らなくてはいけない」と述べ、審査の焦点になる可能性を示唆している。
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