70年前のサイベ沢遺跡発掘調査の映像フィルム発見

update 2016/1/24 10:28


 現在の函館市桔梗町にあるサイベ沢遺跡で、1949年に行った発掘調査の風景を撮影した映像フィルムが、市立函館博物館(青柳町、斉藤総一館長)で見つかった。同館によると当時、発掘調査を映像で残すのは非常に珍しかったといい、約70年前の函館の考古学の歴史を紐解く大変貴重な発見となった。4分30秒ほどの映像には学生帽やセーラー服を着たまま調査に協力する学生の姿などが映っており、市民一丸で発掘した遺跡であることがうかがえる。

 サイベ沢遺跡は縄文時代前期から中期(約6000〜4500年前)にかけて大規模な集落があったと推測されており、全体面積約19ヘクタールの道内でも最大規模の遺跡だ。7つの文化層から円筒土器が出土し、縄文前期の円筒土器下層式を「サイベ沢I式―IV式」、縄文中期の円筒土器上層式を「サイベ沢V式―VII式」などと、7つの土器型式が設定された。

 発掘は同館初めての調査として、49年5月から45日間にわたって行われた。北海道大学の児玉作左衛門教授や同大の大場利夫助手指導の下、市内や札幌の中学生、高校生ら延べ1335人が参加した。

 今回の35ミリフィルムは、2年ほど前から実施している同館の大規模館内整理の際、見つかった。調査報告書にも日本ニュース映画社(当時)の撮影技師、中村誠一氏が現地を訪れていたことが記されており、長い間、同館学芸員の間でも「フィルムが残されているのではないか」といった話が伝えられていた。

 第一発見者の同館学芸員、大矢京右さんは「サイベ沢遺跡」の文字が刻まれたフィルム缶と、中に49〜50年付けの新聞紙が緩衝材として入っていたことから確信。デジタル化作業を進め、DVDとして見ることができた。

 調査の映像は当時、映画館で作品と作品の間などに全国ニュースとして1分間ほど放映されていた。だが、函館のような地方を取り上げるだけでなく、発掘調査自体をニュースバリューにするのは大変珍しかったといい、それほどサイベ沢の調査が全国的に注目を集めていたことがうかがえる。

 音声のない映像だが、真剣なまなざしで土器を掘り出し、土層を確認する人々の姿を鮮明に映し出している。また、手を傷めないようにスコップの取っ手部分を丸めて使用したり、土器のイラストを描いた模造紙の上に土器片をかざして確認したりするシーンもあり、現在の調査方法と変わらないことも多くあることが分かった。

 同館学芸員OBで、19歳の時発掘調査に参加した千代肇さん(85)は「撮影が来ていたことはよく覚えていて、映画館にニュースを見に行った。調査地点にはアイスクリームの屋台が来たり、4メートル以上も土を掘ったりといつもにぎやかだった」と懐かしみ、「70年近くも経って映像が残っているのはとても珍しい。もっと多くの人にサイベ沢遺跡の素晴らしさを知ってほしい」と願いを込める。

 同館は市民向けにフィルムの映像放映を前向きに検討している。同館学芸員で考古学などを担当する小林貢さんは「博物館の第一歩目は戦後間もなくまだ物のない時代だったが、市民と協力して進めたサイベ沢遺跡の発掘調査だった。民俗の出発地点を市一丸となって探ったということを、フィルムを通して多くの人たちに伝えていきたい」と話している。

提供 - 函館新聞社

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