「筋電義手」製作、実用化へ前進 未来大プロジェクト学習
update 2016/11/24 09:32
公立はこだて未来大学が、筋肉から出る微弱な電気を体表面で読み取り、握るなどの動作を可能にする「筋電義手」の製作に取り組んでいる。本年度、初めて馬場義肢製作所(函館市豊川町)の協力を得てモデルの男性に装着。「握る、開く」の動作に成功し、将来の実用化に向けた研究に拍車がかかっている。
未来大の筋電義手は、筋肉を動かす時に出る電気(筋電)を皮膚表面で検知して計算し、しきい値を超えるとモーターが動く仕組みだ。指を動かす筋肉は前腕に集中しているが、検知の際に筋電以外の電気信号がノイズとして混入してしまうため、筋電のみを確実に読み取れるよう2つの電極を前腕につけている。
製作は3年次必修の「プロジェクト学習」で6年前にスタートし、装着は今回が初めて。モデルは左腕に欠損障害がある函館市の笠間祐照さん(41)。製作所を通じて大学から協力依頼を受け「子どもたちが社会で役に立つ手伝いができるなら」と快諾した。
学生たちは腕の型を取り、製作所の義肢装具士が腕にはめる「ソケット」を製作。義手の部分は3Dプリンターで造形した樹脂のパーツを組み立て、モーターや筋電位を計算する小さなコンピューターを含んでいる。外につけるバッテリーと合わせ、重さは711グラム。
筋電義手は高額かつ、使用判定や訓練に時間がかかるため、国内では普及が進んでいない。実用化までのハードルは高いが、この研究では「筋電義手に興味を持つ人が、使用感を試すために活用する」のが目標。ゆくゆくは義手部分をシリコンで作り、物をつかみやすくするなどの改良も考えているという。
16日、同大で装着実験を行い、学生や教授陣、研究に携わる大学院生が見守る中、動作確認に成功。笠間さんは「思ったよりスムーズだが、もう少し握力があれば」と、学生たちと改善点を話し合った。
プロジェクトのリーダー長坂尚樹さん(21)は「苦労してきた分、動いた時はとてもうれしかった」と目を輝かせ、回路設計を担う山代大木さん(同)は「まずは予想通りの動きで安心した。どれほどの重さの物を持てるのか調べたい」と意気込む。
指導する櫻沢繁准教授(生物物理学)は「これまでは障害について詳しく知らなかったため、義肢装具士や障害のある人たちに接触する踏ん切りがつかなかった。だが、学生の熱意に突き動かされ、地域の協力があってここまで来られた。いずれは、今売っている筋電義手を超え、誰も実現していないことをやりたい」と話している。
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