ICカード負担金めぐり調整難航 函バスと桧山町村会
update 2016/10/29 09:51
函館市電と函館バスで来年3月からICカードが導入されるのを前に、自治体の負担金をめぐって函館バスと桧山6町との調整が難航している。道南の市町に導入の財政支援を要請する同社に対し、渡島各市町は応じたが、桧山各町は「町民のニーズは少なく、一企業の投資に支援金は出せない」として拠出を拒否。同社は、生活路線の維持確保や利便性向上などの意義を訴え、運用開始ギリギリまで協議を行う方針だ。
ICカードシステムは、乗り継ぎの際や混雑時にスムーズに運賃を支払うことができるほか、JR東日本の「suica(スイカ)」など鉄道大手のIC乗車券も利用が可能となることから、住民や観光客の利便性が格段に向上することが期待される。
今年3月にはシステム導入業務の委託先が決まり、同社は、車両240台に搭載する機器やICカード発行の端末機10基の設置など導入経費の総額を約4億6000万円と算出。費用は同社と国、奥尻町を除いた道南17市町の3者で3分の1ずつ負担することが決まった。
2014年度の乗降客数の実績に応じて桧山6町に求める支援金を800万円とし、函館市と同社は今春以降調整を進めていたが、桧山町村会(会長・工藤昇上ノ国町長)は「慎重に協議したい」と回答。6月上旬には「町民からの要望が全くない中で、一企業が機械を新しくするのに町が支援金を出すことはあり得ない」として、市に対して負担金の支払い拒否を通告した。
同町村会の幹部は「金額の大小に関わらず物事の考え方が違う」とした上で、同様の支援金をフェリーやタクシー、鉄道など民間企業が求めてくることも予想されることから「函館バスだけに支援を手厚くすることはできない」と説明する。
道南全18市町村で構成する南北海道定住自立圏共生ビジョンは、道南周遊の利用客増加が期待できるとして、10月の変更時にICカードシステム導入の支援事業を追加。これにより、国からの特別交付税を財源として充てることができるようになったが、桧山の各自治体はIC導入支援事業には加わらなかった。
同社の内沢博昭バス事業部長は「人口減少が進む中、交流人口の受け入れに向けてICカードは有効なツールであり、最終的には生活路線の維持にもつながるということを説明して2市15町に同一のサービスを提供したい」と今後も粘り強く交渉を続ける考えだ。
函館市の工藤寿樹市長は26日の定例会見で同問題について言及し、「函館バスは経営が厳しい会社。(会社が維持できなくなれば)困るのは住民であり、自分たちの首を絞めかねない」とする一方、「支援すべきかどうかを考えるのは各自治体の判断」とした。
人口減少が急激に進む道南では北海道新幹線の開業効果を生かした交流人口の拡大が不可欠だ。市生活交通協議会会長を務める函館高専の奥平理教授は「広域観光圏の形成には道南全体が連携して取り組まなければならない。何が地域の発展につながるのか真摯に考えるべきだ」と指摘している。
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