(つなぐつながる新幹線第10部・開業半年 浮かぶ課題2)利便性向上へIC化必要
update 2016/9/27 09:55
函館市電と函館バスに、来年3月をめどに導入されるICカード乗車券。観光客らが持つJR東日本の「suica(スイカ)」に代表される鉄道大手のIC乗車券も利用が可能となり、観光客の利便性が格段に向上する。一方で、道南圏のJR各駅でIC化の予定はなく、北海道新幹線とアクセス列車「はこだてライナー」への円滑な乗り継ぎの切り札とはならない状況だ。
市が採用したのは、九州の交通事業者が多く採用する西日本鉄道グループの「nimoca(ニモカ)」のシステム。ゾーンバスシステムの導入など交通体系の見直しにも欠かせず、乗り継ぎや混雑時の運賃支払いの円滑化などが期待される。
国内外からの観光客が大幅に増え、道南全域に路線バス網を持つ函館バス、観光に便利な市電の利用促進にもつながる。市企業局交通部の廣瀬弘司事業課長は「数年前から『スイカは使えるのか』という問い合わせがあり、今年は特に増えている。ICカード導入で、来函者の利便性は間違いなく向上する」とする。
市や函館商工会議所などでつくる北海道新幹線開業対策推進機構は、開業以前から新函館北斗−函館駅間のIC化を要望してきた。開業後の繁忙期には、新幹線を下車し、函館までの乗車券を持たない一部の乗客がライナーの乗車券を購入するのに列を作った。また、同一平面での乗り継ぎ機会が少ないことや階段の利用も混雑の一因だ。
しかし、JR北海道は札幌を中心とする「Kitaca(キタカ)」の函館圏導入には否定的だという。IC化には多額のコストを要する上、安全対策が急務という事情がある。
市企画部の宿村裕史新幹線対策次長は「JRは安全対策に力を入れ、厳しい状況も承知はしている。機構は本年度で解散となるが、IC化や円滑な乗り継ぎ実現に向け、来年度以降の要望方法を検討していきたい」と話す。
ライナーの利便性向上も不可欠だ。長野商工会議所の北村正博会頭は、8月に函館市内で開かれた道南の経済関係者との意見懇談会で「新幹線を下車した後、東京の通勤電車みたいな混雑した車両で函館に向かうのは改善が必要ではないか」と課題を指摘した。
JR北海道は「繁忙期はライナーを増便または増車して運行するよう努めている」としているが、混雑緩和や乗客の着席機会向上の実現は道半ばだ。旅行客がスムーズに函館まで移動できるよう、関係機関への働きかけが一層求められている。
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