南後志の歴史掘り起こす 函館つながり深く 山本竜也さんが出版
update 2016/8/17 09:54
元函館地方気象台職員で現在は札幌管区気象台に勤務する山本竜也さん(40)=札幌市在住=が、新刊「南後志―寿都・島牧・黒松内―に生きる 五十三人が語る個人史と町・北海道・日本の歴史」を自費出版した。個人史から見えてくる町、北海道、日本がたどってきた歴史を浮き彫りにする作品で、山本さんは「南後志は函館とのつながりが深い地域なので、函館の人にもぜひ読んでほしい」と話している。
山本さんは2012年4月から今年3月まで、函館在住。寿都測候所(06年4月〜08年9月)でも働いていた経験から、14年には後志管内寿都町を題材にした「寿都五十話―ニシン・鉄道・鉱山そして人々の記憶」を出版。今回は隣接する2町村にも目を向け、函館時代に休日を利用しながら1年間掛けて現地取材した。
寿都、島牧、黒松内に縁を持つ60〜98歳の男女53人に会い、個人史を聞き取った。内容は多岐にわたり、古くは戊辰戦争やニシン漁、新しいところでは郵政民営化、ほかにも馬や漁業、農業、五輪、有線放送、映画などに関する貴重な証言が得られた。太平洋戦争では、徴兵検査や出征、空襲、シベリア抑留、引き揚げなどあらゆる体験談を聞いたという。
聞き取り調査と同時に資料調査も進めた。新聞を函館中央図書館で閲覧するなどして裏付け作業を行い、1年掛かって出版にこぎつけた。表紙には黒松内―寿都間の私鉄寿都鉄道(1920〜72年)社員の写真を採用。1938(昭和13)年に撮影したもので、出征する社員を仲間の社員が見送る様子が収められている。
道内は明治時代、開拓使廃止に伴い函館県、札幌県、根室県が設置された歴史を持つ。南後志は函館県に入っており「地理的にも札幌より函館の方が近く、今でも運転免許試験場や法務局、裁判所は函館を利用する」と山本さん。
山本さんは「個人史から大きな歴史を読み取ろうとする本は珍しいのでは。地方の町の歴史に興味がある人はもちろん、3町村出身で函館に住んでいる人に読んでもらえたらうれしい」としている。1000部製作。A5判610ページで、価格は2160円。購入は山本さん(TEL090・5185・5723)へ連絡するか、通販サイト「アマゾン」で。函館の書店では扱っていない。
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