函館YWCA会館と旧藤澤家住宅 国の登録有形文化財に
update 2016/7/16 09:31
国の文化審議会(馬渕明子会長)は15日、函館市の「函館YWCA会館」(松陰町1)と、「旧藤澤家住宅主屋」(時任町10)の2件を、登録有形文化財とするよう文部科学相に答申した。それぞれ和、洋風の意匠をもつ函館の古き良き住宅として高い評価を得た。函館では4年ぶりの登録となり、今回の2件で18、19件目。所有者からは喜びの声が上がり、後世へ函館の歴史と文化を受け継いでいこうとする熱意が高まっている。
登録は建設後50年が経過し、@国土の歴史的景観に寄与しているA造形の規範となっているB再現することが容易でない―ことが基準。市は1月に登録へ向けた書類を文化庁に提出。その後、文化庁から国の文化審議会に諮問し、文化財分科会の審議、議決を経て、同日に馳浩文科相へ答申された。
YWCA会館は1928年ごろに建設。木造一部2階建て鋼板葺で、専用住宅として建てられた。外壁は、妻面上部に柱型や格子状の装飾があり、ほかは下見板張り。正面玄関の屋根(庇)は、照り起りの曲線が特徴的で、函館に多く見られる洋風建築の側面と、昭和前期の質の高い郊外住宅の趣を示している。
YWCAは英会話教室や平和活動などを続ける女性ボランティア団体で今年は67年目。活動拠点として会館を使用し、石山千賀子総幹事(50)は「さまざまな方の協力の下、会館の価値を再認識し、67年間の歩みを誇りに思う」と語る。今でも数十年前の会館利用者が立ち寄り、写真を撮っていくこともあるといい「地域に開かれた場所として、会館の活用方法などを探り大切にしていかなくては」と抱負を述べる。
函館中部高校近くにある旧藤澤家住宅は、木造一部2階建てで34年に建てられた。中庭を囲むコの字型の平屋で、10畳の座敷を二間並べる。正面外壁は簓子(ささらご)(縦に打ち付ける細長い木材)付き下見板張りで、函館の伝統的な造形「切妻破風(きりつまはふ)」の付いた玄関を持つ。同年の函館大火後に展開した新興住宅地に残る、和風意匠を基調とする住宅だ。
所有者で道教育大函館校の池ノ上真一准教授(42)は、歴史的建造物としての価値継承と、現代人にとって快適な居住性向上の両立を目的に、同住宅を買い取って改築した。外観や家の柱などはそのままに、既存の外壁の内側に気密、断熱対応を施した。池ノ上准教授は「古い空き家などの価値を作り直し、現代的な暮らしを送りながら、文化的な豊かさを感じられるようチャレンジした」と振り返り「文化資源を生かしたまちづくりを進めるための試金石として、多くの人に見てほしい」と話している。
正式登録は11月ごろの予定。市教委文化財課は「2件とも西部地区から離れた場所にあり、新たな展開がみられた。登録が増えていくと同時に、所有者の大事にしたいという思いが感じられ、非常に喜ばしい」としている。
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