つち音響く北海道新幹線・〈4〉/並行在来線分離、代替輸送の行方焦点

update 2005/5/27 10:03

 並行在来線に当たるJR江差線の五稜郭―木古内間は、新幹線開業後にJR北海道からの経営分離が決まっている。坂本真一JR北海道会長は「見通しとして第3セクターによる新会社での旅客輸送が想定される」との考えを示している。

 道は8月までに沿線自治体の函館、上磯、木古内とともに「並行在来線対策協議会」を立ち上げ、開業の3、4年前をめどに代替輸送機関や業務の在り方などを決める方針だ。

 JR北海道の菅原重光函館支社長は「コメントできる立場にはないが、黒字経営のためには一定の技術と安全性を落とさず、列車本数や業務量、働く人の賃金などを決めていかなければならないだろう」と話す。

 五稜郭―木古内間の営業距離は37・8キロで、1日1キロ当たりの平均乗客数を示す「平均輸送密度」は2004年度で5000人前後。朝夕の通学・通勤者を中心に、市内へ通院する高齢者にとっても並行在来線の動向は気がかりだ。

 上磯町内の40代女性は通勤でほぼ毎日利用している。「人との触れ合いで温かみがある。サービスの低下は避けてほしい」と懸念する。

 JR北海道は新会社立ち上げへの助言など、全面的な協力を約束している。鉄道での輸送が決まれば、新会社は安全運行や効率的なダイヤ編成など、JRからノウハウを最大限吸収することが欠かせない。

 また、経営分離に伴い、木古内―江差間(42・1キロ)の存廃問題が再浮上した。問題の発端は1968年、国鉄諮問委員会が全国の赤字ローカル83線の廃止を求めた意見書にさかのぼる。

 同区間は、木材や鉱産資源の輸送で沿線を支えたが、60年代前半から過疎化や自家用車普及で利用が低迷。たびたび廃止が議論され、85年には貨物輸送も全廃。88年の津軽海峡線開通で、松前線がバス転換する一方、同区間は江差線の一部として生き延びた。だが、JR北海道の坂本会長は新幹線開業をめどに廃線とする意向を示した。

 JRが廃止を申し出ても、沿線の上ノ国・江差両町には「第3セクター方式で存続させる体力はない」(町幹部)。工藤昇上ノ国町長はバス転換を視野に、新駅ができる木古内町に向かう道道整備の促進を訴えている。

 桧山管内では国鉄の分割民営化に伴い、瀬棚線がバス転換した。路線1キロ当たり3000万円の転換交付金が沿線町に支払われた。こうした国の施策がない現在、誰がバス運行を担うのか。廃線はJRの問題であり、今後の公共交通機関の在り方などは地元とJRを交えた協議になる見通し。ある町議は「国やJRの支援がなければバス運行は不可能だ」と語る。

 乗客が減る一方、通学生や高齢者の足として江差線は地域に根付いている。廃止やむなしの空気に対して鉄路を失う不安も広がる。過疎地域に必要な交通手段のあるべき姿とは何か。町を超えた地域全体の議論が求められている。(浜田孝輔、松浦 純)

提供 - 函館新聞社



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