つち音響く北海道新幹線・〈2〉/商業施設の誘致も視野

update 2005/5/25 10:07

 「おれんどご(土地)、どうなるべが」。昨年12月に北海道新幹線新函館―新青森間着工が正式決定して以来、大野、木古内両町役場には、JR駅周辺の町民から、こうした問い合わせが絶えない。市井の関心は、10年先の開業後のビジョンよりも“町の区画整理の境界線引き”。両町は対応に苦慮しながら、新駅を核とした地域振興策の検討を進める。

 大野町は、2000年度に策定した整備計画を基に、駅周辺の未来図を描く方針だ。当時の考えでは、開業から20年後までに、約231ヘクタールを区画整理。駅と国道227号を結ぶ道路を敷き、機能的な街並みを築く。大規模な商業複合施設の誘致も視野にある。

 ただ、対象の多くが農地。田園を街に変えるのは容易ではない。工場の進出は念頭にないが、宅地へ変更するにも上下水道など、インフラ整備が伴い、時間が掛かる。町都市整備グループは「開業までに、少なくとも駅近辺の区画整理を済まさなければ」と危機感を漂わせる。

 中心市街地の空洞化が懸念される函館への配慮も欠かさない。渡島支庁を交えながら、函館と広域的な視点で協議する考えだ。同グループは「こちら側に新設されるのは、ビジネスホテル数件程度だろう。観光客主体の湯の川温泉を脅かすことはあり得ない」と宿泊施設を例に、役割の違いを強調。吉田幸二町長も「身の丈に合った整備を」とし、近隣自治体との連携の重要性を説く。

 木古内町にも1999年度に打ち出した振興計画はある。駅をはさむ1ヘクタールずつを対象とし、観光交流施設や交通ターミナル施設、駐車場などを整備する青写真。渡島南西部のアクセス拠点としての役割がうたわれている。

 だが、町新幹線推進室は憂慮する。「誘致目的で作成したもので、現状に即した計画が早急に必要」。4月に庁内で検討委員会を立ち上げ、ビジョンづくりに本腰を入れ始めたばかりだが、「周辺整備工事にかかる時間を逆算すると、3、4年後には計画をまとめないと」と焦りもうかがえる。

 町民のムードもいまひとつ。「経済効果の大きい終着駅の大野は、盛り上がって当然。うちは通過駅にすぎないからね」。町幹部がこう漏らすほどだ。“北海道の玄関口”となる大野とは違い、ホテルなどの企業進出はあまり望めない。大森伊佐緒町長は「どれだけお客さんに降りてもらえるかがカギ。広域観光ルートの確立が必要となる」と課題を語る。

 両町の共通認識は「10年間は長いようで短い」。町の興亡を分ける一大事業なだけに、のんびり構えてはいられない。工期が前倒しされると7、8年。つち音の響きが、秒針のように時の流れを告げる。

提供 - 函館新聞社



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