江差町風力発電、真相解明にはほど遠く

update 2005/2/25 10:02

 【江差】風力発電を行う第3セクター・江差ウインドパワー(社長・濱谷一治町長)。風車の欠陥をめぐる施工業者・JFE(東京)との損失補償、発電所の地権者で株主の斐太工務店(名古屋市)との利益配分をめぐる交渉は依然、難航している。2002年3月の本格稼働から3年―。解決の糸口を見いだせない町に不信感も広がっている。

 28基ある風車は、自治体が手掛ける風力発電では国内最大級。だが、発電出力は計画の半分に満たず、ウ社の累積赤字は1億5000万円に上る。北電への売電単価は、06年度まで1キロワット時14・7円だが、07年度以降は4年ごとに8・21円、4・58円、2・55円に下がる。「このままでは維持費も出ない」と町はため息をつく。

 ウ社とJFEは、欠陥に伴う売電収入の補償で対立している。町は損害額を15億円以上と算定。弁護士を通じて交渉しているが「双方の主張は平行線」(町幹部)だ。発電所の総工費は約44億円で、ウ社が借りた15億円を町が債務保証した。本年度末でも約10億円が残る。返済を肩代わりすれば「町もつぶれる」(他の町幹部)。

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 町とウ社が設けた、風力の専門家によるプロジェクト委員会は昨年、出力が得られない原因を「風車の約半数が発電に適さない風が弱い場所にある。改修しても十分な出力を得られないと」指摘。風車の移設や大型風車の導入を提言した。

 だが、ウ社には資金がない。金融機関の融資、電力会社の支援が望まれるが、斐太工務店との“契約”が障害になる。同工務店は、発電所用地でのリゾート開発に失敗、町を巻き込み風力発電に切り替えた。ウ社の前社長(前江差町長)は、5%の株を持つ同工務店に、経費を差し引いた利益の50%を4半期ごとに配分する契約を「自ら提案した」(町幹部)とされる。真相は謎のままだ。

 「利益の半分が相殺される事業に融資や投資する会社はない」(金融関係者)。80%の株を持つ町は、違法な契約として、破棄を要求しているが、交渉は行き詰まっている。

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 ウ社をめぐる諸問題、同工務店との契約の違法性の有無に、司法当局も関心を寄せた。町議会は03年、地方自治法100条による調査委員会(百条委)を設置したが、新旧町長派の泥仕合に終始した。

 百条委終結後、当局はウ社から、関係書類の任意提出を受け、分析を進めた。契約が背任罪に当たる可能性もあるとみて、強制捜査もにらみ、町に担当職員の事情聴取を打診した。だが、町は要請を拒否。役場内の混乱、職員の健康問題が理由だった。

 司法関係者は「捜査を回避したい町の判断」と語る。風力問題に司法のメスが入ることはなかった。「背任は5年で時効。町は真相解明のチャンスを捨てた」とも。疑問が解明されず、風化することに関係者はほぞをかむ。「町は何を守ろうとしたのか…」(司法関係者)。解決にはほど遠い風力問題を前に、この言葉は重い。

提供 - 函館新聞社



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