道教大佐々木教授が「日蓮とその思想」出版…弾圧の背景、変容探る
update 2005/1/14 12:25
道教育大函館校の佐々木馨教授(58)-日本中世思想史-がこのほど、9冊目となる自著「日蓮とその思想」を平楽寺書店(京都)から出版した。鎌倉仏教・法華宗(日蓮宗)の祖師・日蓮(1222―82年)の宗教思想を、歴史学の立場から論考。3度にわたる思想弾圧、排除の背景を探り、日蓮が多様な思想の中から「法華経至上主義」を唱えた姿、当時から道南など「北方」を意識していた点などに着目している。
35年間にわたり取り組んできた日蓮や中世仏教の諸研究から、思想の体系化を試み、弾圧を通して体制側から反体制側に変容した姿が伝わる。
執権・北条時頼に「立正安国論」を上呈するなど、親鸞や道元といった他の鎌倉仏教の祖師に比べ、政治性や政治思想の高い宗教者であることを解説。その政治思想が受け入れられなかった理由を、鎌倉幕府の宗教政策などから詳述している。
例えば、幕府の宗教センターとも言える「鶴岡八幡宮」の別当職は天台宗寺門派などが多く占め、天台宗山門派の「正統」を自認する日蓮とは敵対する関係だったことを紹介し、思想弾圧の背景に位置づけた。
また、日蓮の特色として、他の鎌倉仏教の祖師には見られない北方への認識「蝦夷(えぞ)観」と、自身の病歴や病に対する「衛生思想」を持っていた点に注目。「13世紀の時代に、現在の北東北から道南まで関心を示しており、弟子の日持(にちじ)が布教の形で教えを受け継いだ。自身の病気も赤裸々に語り、疾病を治すのは法華経であることを強調するなど、宗教者として幅広い視点を持っていた」と評価する。
「念仏無間、禅天魔、律国賊、真言亡国」とした排他的な「四箇格言」も、さまざまな思想を学んで法華経と比較し、生まれた主張であることを詳細に論じている。
佐々木教授は「日蓮の幅広い視点は文永・弘安の役(蒙古襲来)という国難に見舞われた時代が生んだのではないか。北を見つめた目は、現代の国際感覚につながる。病気を見つめた姿は、21世紀の脳死問題などを問う契機になる。多面的な思想を学んだ宗教者の姿から、物事を複眼的に見る大切さなどが伝われば」と話している。A5判、480ページ。定価5985円。
提供 - 函館新聞社
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