高級魚マツカワ、もうすぐ身近な魚に?

update 2004/11/3 13:19

 【鹿部】漁獲量が少なく、ヒラメと並ぶ高級魚として知られているマツカワ(カレイ科)の稚魚を、2006年度から年間100万尾放流する計画が進んでいる。1990年からこのプロジェクトに取り組んできた道立栽培漁業総合センター(鹿部町本別)の齋藤節雄魚類部長(水産学博士)は「技術的にはほとんど完成している。あとは100万尾という量に対応できるかどうか。ぜひ成功させたい」と話している。

 同センターは1972年の開設以来、クロソイ、ホッキガイ、エゾバフンウニなど、さまざまな魚介類の種苗育成技術の開発に取り組み、96年にはヒラメの実用化に成功している。

 マツカワは、かつては北海道沿岸に広く分布したが、現在では太平洋沿岸のごく一部で年間10トン未満の水揚げしかない「幻の魚」。体長は大きいもので80センチを超え、肉厚でほどよく脂の乗った白身は、刺し身や煮付け、ムニエル、フライなどさまざまな料理に合う。

 同センターはえりも以西栽培漁業振興推進協議会(事務局・伊達市)と協力し、採卵やふ化、稚魚育成、試験的放流などを通じて実用化の技術確立に努めてきた。

 「幻の魚」の名の通り、研究開始当初は天然の採卵用成体を確保するのに苦労した。齋藤部長は「年に2、3匹しか取れない時もあった。ふ化してからも、えさの与え方や最適な飼育環境をどう整えたらいいかなど、苦労が絶えなかった」と振り返る。それでも一段落した今は、「次はキチジ(キンキ)を手掛けたい」と早くも新しい目標に意欲を燃やしている。

 現在、同センターでは、水槽の規模の関係で年に10万尾までの稚魚しか育てることはできないが、06年度に伊達市に完成予定の種苗生産施設では実用化のめどとなる年間100万尾の育成が可能。齋藤部長は「現時点ですでに100万尾に対応できる自信はあるが、さらに精度を高めていきたい」と研究の仕上げに余念がない。

 同協議会では、マツカワに親しみをもってもらおうと、道民からブランドネームを公募し、「王蝶(おうちょう)」という名前でのPR活動も積極的に行っている。一般の食卓に「王蝶」が上がる日も遠くなさそうだ。(小川俊之)

提供 - 函館新聞社



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