連載企画「天津との翼」上

update 2004/10/29 11:21

 函館と中国・天津間の定期空路開設を目指して訪中した公式訪問団(団長・西尾正範函館市助役)がこのほど、帰国した。定期便就航へのハードルは高いままだが、天津側からのチャーター便初運航が決まるなどの成果を挙げた。要望活動を始めて10年目。ようやく上昇気流をとらえ始めた“天津との翼”の行方を探った。

 ■厳しい定期便開設

 定期路線開設要望は、函館の経済交流団が1994年に天津を訪れたことがきっかけ。同団が定期路開設を提案すると、天津側も意欲を見せた。翌年から、定期路線開設に重点を置いた要望に切り替え、毎年実施している。

 北東北3県(青森、秋田、岩手)や道内に中国と結ぶ路線がなかった95年の需要予測では、年間1万7000人の利用者が見込まれ、開設の機運も高まった。しかし、98年に千歳―瀋陽間が結ばれると、次第に尻すぼみに。(1)日中2国間協議で、乗り入れ地点に指定を受けていない(2)天津で訪日ビザが発給されない―なども障害となり、活動は停滞した。

 現在、国内を見渡しても天津と結ばれているのは、名古屋線と成田の貨物線の2路線だけ。今回の訪中で函館市は、シンガポールやウラジオストク(ロシア)同様、早期開設を断念せざるを得ないムードさえあった。

 ■まずはチャーターで

 チャーター便も定期便と同じ問題を抱え、天津側からは1度も運航されていないが、9月、天津が訪日団体ビザ発給地域に指定されたことが、こう着状態の突破口となった。

 「定期便開設は難しいが、ビザ解禁となった今、チャーター便は可能なはず。双方から乗るようになれば、1人当たりの運賃が下がり、客も増える」。西尾団長の訴えに説得力があった。

 定期便は一度結ぶと撤退は難しいが、チャーター便ならリスクは少ない。天津側にとっても、ビザが解禁されれば、難色を示す理由はなかった。天津の担当者は「来年2、3便飛ばします。まずはチャーター便で実績を作りましょう」と快諾。函館から天津という空路が、ようやく「一方向」から「双方向」に変わる見通しがついた。

提供 - 函館新聞社



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