幻のナシ“七重”への思い
update 2004/10/27 10:30
【七飯】幻のナシ“七重”の火を消すな―。七飯町の果樹農家、西賢治さん(54)方では、ナシ“七重”の収穫がピークを迎えている。1950年代に七飯地区で品種改良された品種で、現在も栽培を続けているのは西さんの果樹園だけ。「貴重な品種なので、今後も守り続けていきたい」と西さんは話している。
“七重”は、植物学者で、旧七重村村長も務めた故田村半吾さんが、日本ナシと洋ナシを掛け合わせて生まれた。洋ナシの甘みと日本ナシの食感を併せ持つ独特の味が評判となり、かつては町内で幅広く栽培されていた。
しかし、完熟状態で収穫しなければならず、収穫後の日持ちも悪いため次第に扱う農家も減り、現在では西さん方にある12本だけとなってしまった。
西さんは「手間がかかる品種なので、商売にはならないが、七飯の歴史がつまった品種なので愛着がある。今年は台風被害もあり収穫は半分以下。また、収穫直前の気温が高すぎたため、いつもの年より甘みが少なくて残念」と悔しそうに話す。
それでも町内には“七重”の独特の食感に根強いファンが多く、西さんのところへ直接買い求めに来る人が絶えない。「保存がきかないので流通に乗せにくく、一般の店舗には出回らないが、わざわざ足を運んで買いに来てくれる人たちがいるので、やっぱり作り続けていかなければと思う」と西さん。
9月の台風18号では、さまざまな農作物に塩害が広がった。町内でも成長のサイクルを狂わされ、季節外れの新芽や、花が咲く植物まで出た。しかし西さんの果樹園は周囲が防風用の高い木で守られていたため、落下以外の被害は最小限に食い止めることができた。「何とか収穫までこぎつけることができたが、一歩間違えば全滅の可能性もあった。ここ最近の異常気象は果樹栽培にとって厳しい試練になっている」と顔を曇らせる。
それでも西さんは「元気な限りは果樹栽培は続けたい。その中でも、わずかな数になってしまったが、しっかりと“七重”の伝統を守り続けたい」と誓った。(小川俊之)
提供 - 函館新聞社
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