日本英学史学会で井上能孝さんが研究発表

update 2004/10/21 10:12

 箱館英学をテーマに研究を続ける井上能孝さん(73)=函館市日吉町3=が、日本英学史学会(本部・東京、茂住實男会長)の創立40周年記念第41回全国大会で、研究発表する。テーマは「ペリー箱館来航150周年に憶(おも)う〜Right翻訳語『権』&『理』の発祥」。専門家らを前に長年の研究成果を披露するチャンスとして、大会を心待ちにしている。

 同大会は30日から11月1日まで、東京の早稲田大学を会場に開かれる。発表は31日。井上さんら23件の研究が発表される。

 井上さんは、高校英語教諭を経て、現在は函館大学非常勤講師。函館日米協会副会長。教職の傍ら25年ほど前から、箱館英学をライフワークに地道な研究に励んできた。同学会には4月に入会したばかり。

 研究発表では、来函した米海軍ペリー提督の通訳による訳文から、「Right(権利)」の翻訳語のルーツが函館にあったとする自説を展開する。研究によると、「Right」の翻訳語については、オランダ語通訳を務めた蘭学者、武田斐三郎が1857(安政4)年ライス貿易事務官の信任状の翻訳で「権」と表記。59(同6)年には、黒船の退帆後に着任した名村五八郎が、ハリス総領事の書簡などで「理」と英訳している。

 「権利」という訳語については一般的に、福沢諭吉や西周が創案したと考えられているが、井上さんは「権利の概念は、権と理(利)が枝分かれして函館から発信された。このことは英学的に見ても興味深いと思う。英学を研究している人たちにこのことを知ってほしい」と力を込める。

 これらの研究についてはいまだ解明、発見されていないことも多く、井上さんは「これからも箱館英学やRight翻訳語のルーツを解明したい」と、今後の研究に意欲を見せている。

提供 - 函館新聞社



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