今年の野外劇公演295万円の赤字

update 2004/10/5 10:09

 今年の市民創作・函館野外劇の17回公演(市民創作「函館野外劇」の会主催)の収支決算がまとまった。収入4639万3000円に対し支出4935万円で、295万7000円の赤字決算。今年は特別公演を含め計11回開催し、観客動員は約1万人を突破、近年にない盛況となったが、課題として挙がっていたぜい弱な財政基盤の克服には結びつかなかった。累積赤字も約900万円に上り、同会は存続の是非も含め、抜本的な解決策を探る方針。函館の新たな文化として定着した野外劇は、大きな岐路に立たされている。

 「これ以上赤字が解消できなければ存続にかかわる死活問題だ」―。同会の輪島幸雄理事長代行は苦渋の表情で語る。「最大限の自助努力は行ったが、もはやボランティアによる自転車操業的な財政運営で、黒字に転換するのは難しい」

 今年の決算は、水舞台や照明機材や会場設営、舞台制作などハード面で収入の60%以上にあたる約3300万円を費やした。収入はチケット販売などで2500万円を確保したものの、市の補助金は700万円、大きな頼みの広告協賛金は751万円にとどまった。「ばく大にかかるハード面での経費をどうクリアするか」という課題の解消には至らなかった。

 昨年のリニューアル公演は好評を得て今年の観客動員に結びついた。この間、NHKが全国放送したほか、大手の出版社や旅行会社が、新たな函館の観光資源ととらえ、雑誌で紹介したり、旅行ツアーに組み込んだりし、全国的に高い評価を得た。

 今年は入場者が1万人を突破。ただ、「地元の盛り上がりを反映したわけではない」(関係者)とする指摘もあり、同会は「新たな観光資源として売り込む戦略は一定の成果を挙げたが、地元の動きは今ひとつ」と総括した。

 一貫して有志のボランティアで運営してきたが、こうした赤字体質が続く現状に一部の関係者のからは存続の是非を問う声も上がっている。

 同会は近く緊急会合を開き、関係者を集め、存続の是非も含め抜本的な議論をするつもりだ。

 市民のボランティアで支えてきた野外劇。地道な努力が外部の高い評価につながってきたが、このまま続ければ財政状況の悪化は進行するばかり。函館の新たな文化創造や観光資源、まちづくりという大きな役割を果たしてきただけに、発信地としての地域の姿勢が問われている。


 函館野外劇

 1988年、フィリップ・グロード理事長の発案のもと、市民ボランティアを中心にスタート。02年には、同野外劇の会が中心になり、全国初の野外劇サミットを開催。翌年の03年には、プロの演出家を招き、舞台装置、脚本などを見直しリニュアール公演し、好評を博した。

提供 - 函館新聞社



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