函八のサクラが切られる寸前に開花

update 2004/9/29 10:11

 「切らないで」―。函館市谷地頭町の函館八幡宮(中島敏幸宮司)の一角に植えられている樹齢100年(推定)のオオヤマザクラが、28日までに季節外れの花を咲かせた。台風18号の暴風で太い幹が途中から折れ、近日中に切り倒される予定だったが、サクラの小さな声が奇跡を呼び、一転して保存されることになった。

 同八幡宮によると、このサクラは1918(大正7)年に完成した現社殿建設中の15年(同4)年に植えられた。高さ約10メートル、幹の直径は約40センチという古木で、毎年春ともなればピンク色の花を咲かせていた。

 しかし、8日に接近した台風18号の暴風のあおりを受け、3分の2を残して幹の上部が折れてしまった。もともと木自体は腐りかけ、幹の内部が空洞化していたこともあり、今回の被害を機に根元から切り倒すことにした。

 だが、28日の午前中に神職の1人が折れた部分の脇から出た3本の枝先に8輪ほどの花が咲いているのを発見。「あした(29日)にでも切ろうかと思い、何げなく見たら花が咲いていた。本当にびっくりした」という。花のほかにも、約20個のつぼみがピンク色に染まり、春のような光景が広がっている。

 この奇跡を前に、同八幡宮では切り倒すことを思いとどまり、空洞の部分の手入れも含めて保護することにした。「ただの季節外れの開花とは思えない。この八幡宮を90年間ずっと見守ってきた木が、切られる寸前に花を咲かせたとなればなくすわけにはいかない。自然に朽ち果てるまで育てていく」と感慨深げだ。

 サクラに詳しい道教育大函館校非常勤講師の浅利政俊さんは、「オオヤマザクラは気温に敏感。台風で葉が落ちた後の寒暖差で冬を越し春が来たと勘違いしたのでは」と説明するが、開花のタイミングについては「実に神秘的でロマンチックな話」と同調している。(池田比佐史)

提供 - 函館新聞社



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