台風18号、大成町の高波被害甚大

update 2004/9/11 11:59

 あんな大波、初めて見た―。住民たちが青ざめた表情でつぶやく。30メートル近い猛烈な高波が3000トンもの重さがある防波堤を押し倒し、沿岸の住宅を襲った。大成町は、台風18号の高波で死者1人、150棟以上の建物が損壊や浸水する被害に見舞われた。大沼湖畔や駒ケ岳山ろくの別荘地も、無数の倒木で一時孤立するなど、荒れ狂った台風がすさまじい威力を見せ付けた。

 大成町では、南西に面した沿岸部が大打撃を受けた。花歌地区では8日午前9時ごろから、防波堤を超えた横殴りの高波が家々を襲った。壁や窓を破られた室内では、家具がなぎ倒され、砂混じりの海水が渦を巻いた。

 木村一雄さん(73)宅では、台所にあったはずの冷蔵庫が居間に転がっていた。阿部弘子さん(66)が避難先から戻ると、室内はめちゃくちゃに破壊され、天井からは海水がしたたり落ちていた。「怖くて避難所で毛布をかぶっていた。ひどい被害で涙も出ません」と、阿部さんは恐怖を振り返る。

 同町の久遠漁港では、1基約3000トンの防波堤5基が破壊された。港湾関係者が「波は高さ20メートルの赤灯台を軽々と超えた。防波堤はまるで役に立たなかった」と話す。漁港南側では、水産加工場の大きくへこんだ壁面が衝撃を物語る。波は大型トレーラーを50メートルも押し流し、10メートル近い高低差がある坂道を駆け上がった。復旧に当たる作業員(46)は「想像を超える威力だ」と語った。

 漁港周辺の住宅も、軒並み被害を受けた。手塚貢さん(73)の自宅は3階建てだが、2階の居間に高波が押し寄せた。壁には乾いた塩の結晶がこびり付く。手塚さんは「居間は海面から10メートル近い高さがあるはず…」と絶句した。

 近くを流れる本陣川は、海水が数100メートル逆流。橋の下には重さ約2トンの消波ブロックが転がる。1階が浸水、2階も窓を破った高波が入り込むダブルパンチを受けた住宅も。

 8日午後からは、被害を受けた沿岸地区で、土砂や流木の撤去作業が始まり、ダンプカーやブルドーザーが慌ただしく行き交った。乾燥した土砂が舞い上がり、町全体が黄色くかすむ。壊れた住宅の撤去や修理に当たる建設業者の手が足りず、復旧は進まない。

 安否を確かめ合う住民は「北海道南西沖地震(1993年)をはるかに超える被害だ。風景が一変してしまった」と、深刻な表情で話し合っていた。

提供 - 函館新聞社



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