イカスミに含まれるメラニンの抽出に成功
update 2004/7/29 10:13
北海道立工業技術センター(函館市桔梗町)の田谷嘉浩・装置技術科科長の研究チームはこのほど、イカスミに含まれるメラニン(黒色色素)を100%抽出することに成功した。色素の分子と分子をつなぐタンパク質や脂質を酵素で分解する画期的な技術で、製造するうえで黒色色素が欠かせないインクや化粧品などへの応用が期待されている。
イカスミ中のメラニン量は、全体の90%前後で、残り10%はタンパク質や脂質。このタンパク質などが接着剤の役割を果たし、メラニンの分子同士が固まり、イカスミを活用するうえでの障害となっていた。
同グループは、昨年9月から可食酵素を使い、メラニンだけを取り出す研究を開始。「同じイカなら固まった色素同士を分解もできるのでは」と、するめの製造過程で使うタンパク質分解酵素に着目。各種酵素で試した結果、抽出率100%の酵素を発見した。
抽出したメラニンの大きさはたばこの煙より小さい約0・3ミクロン。水に溶かし、室温で数カ月置いても、大きな変化がないことも確認されている。現在、石油から作ったすすが黒色色素としてインクやトナー(複写印刷などに使う粉)に広く使用されていて、イカスミから抽出したメラニンは安全面でも優れている。
応用が期待されているインクの粒子は、小さく、球型に近いほど高性能で、インクジェット粒子は0・8―1ミクロン。従来のインクより性能の高いインクの開発も可能になるという。また、黒色色素が不可欠な化粧品に食物由来の成分を使用することで、高い安全性が実現できる。
これまでにインクや化粧品の製造業や十数社や半導体製造過程へ応用などの引き合いがあるという。田谷科長は「食物由来の色素のため、食べられるインクを作ることもできます」と話し、今後は大量生産の方法を確立し、来年末の製品化を目指す。
提供 - 函館新聞社
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