首長不在の南茅部町役場
update 2004/7/26 10:49
飯田満・前町長が公選法違反容疑で逮捕され、首長不在となった南茅部町。12月1日に函館市など渡島東部4市町村との合併を控えているだけに、合併への影響を懸念する声が聞かれる。新町長を決める選挙は8月24日告示、同29日投開票と決まり、任期約3カ月の首長選びは粛々と進む。「平成の大合併」道内第1号が確実な5市町村だが、このままスムーズに合併しても後味の悪さが残りそうだ。
「飯田町長は4町村のとりまとめ役だった。法定協議会で、住民に直接かかわる問題は決まったといえ、詰めを要する部分があり、飯田町長が欠けることは大きな影響があると思う」
渡島東部5市町村の法定合併協議会会長の井上博司函館市長は22日、定例記者会見で、同い年の盟友の逮捕を無念がるとともに今後への影響を懸念した。
井上市長は、細部の詰めが必要な例として、町立国保病院を挙げた。しかし、市長の発言の背景には、6期目というベテラン首長で、合併議論で町村側をリードしてきた前町長に対する配慮がうかがえる。
合併の骨組みとなる35項目は、同協議会で決定済み。5市町村議会は合併を議決しており、残る手続きは9月の道議会での廃置分合議決、これを受けての総務相告示(11月上旬)だけだ。
同協議会事務局も「政策的判断を要する議論はほぼ終わっている。事務レベルの作業を淡々と進める段階」と、事態を冷静に受け止める。実際、国保病院の問題のほか一般職の処遇など、市が中心となって作業を進めている。
同町の細井徹助役は「合併への影響は少ないと思う」と話し、同町議会の杉林幸弘議長も「合併に向けた方向性はすでに定まっている」とし、大きな影響は否定する。
ただし、合併後の人事への影響は必至だ。前町長は合併後、「函館市南茅部支所長」への就任が決まっていた。他の3町村の首長も支所長となり、合併後2年4カ月、「地域の責任者」として合併建設計画の進ちょく状況をチェックしたり、その地域独自の課題処理に向け、市長と連携する立場になるはずだった。
前町長の辞職により支所長が空席に。選挙で新町長が選ばれれば、合併後は支所長に就任する見込みだ。しかし、仮に副支所長に就任する細井助役が町長選に出馬し、新町長になれば、今度は助役ポストが空く…といった具合に、玉突き人事が予想される。
特別職に若手を登用するにしても、合併から2年4カ月以降の処遇が決まっていなければ、おいそれと引き受けることはできない。ポスト争いという二次的な混乱が生じる恐れもある。
地元住民からは、「漁師まちなので、新首長には漁業振興にあつい人を期待したい」(70代男性)、「函館中心となり、衰退していくのだけは困る」(40代女性)など、今後を憂う声が出始めている。
では、来月24日告示の町長選の行方はどうなるのか。関係者の一部からは、町を代表して前町長とともに合併議論の中心にいた細井助役を推す声も聞かれる。町政の異常事態を早々にかつ混乱なく収拾するには順当な意見と言える。しかし、そう簡単に事が進む保証はない。
また、だれも立候補者が出ず、告示を繰り返すことで新町長を選出できないまま合併を迎えるケースもあり得る。
いずれにせよ、告示まで約1カ月。思いがけない状況に追い込まれた南茅部町の行政、議会、町民がどんな道を選択するか注視していきたい。(吉良 敦)
提供 - 函館新聞社
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