合併断念、七飯議会の「決議」がネックに
update 2004/7/19 16:15
昨年から協議を進めていた七飯町と鹿部町の合併は、新市の名称をめぐる両町議会の感情のもつれによって解消するという、最悪の結末を迎えた。その背景には、「吸収合併だが、中身は対等の精神でいきたい」とした水嶋清七飯町長の発言を発端とする、ボタンの掛け違いがあるほか、今年4月に「吸収合併だから新市名称は今のままの七飯市で」と決議した七飯町議会合併調査特別委員会の「配慮のなさ」(鹿部町関係者)がある。合併を棒に振った「泥仕合」の真相を探った。
今回の合併見送りの裏には、七飯、鹿部両議会の名称に対する姿勢とともに、七飯町議会内部の確執という側面が浮かび上がってくる。
七飯町議会は改選後の昨年5月、通算3期目となる松田朝治氏の議長再選に絡み、議員同士の争いが発生。現在もその構図は変わっておらず、通常の議会でも、理事者を置き去りにして「議長派」と「反議長派」が言い争う光景がしばしば見られる。
加えて、その松田議長は大沼地区が地盤ということもあり、反議長派の議員は、鹿部側が主張する「大沼市」に、過敏なまでの拒絶反応を示すケースが見られた。
新市の名称選考委員会が今年3月、町民アンケートの結果から名称を「七飯」「ななえ」「大沼」の3候補に絞ったころから、両町では名称に関する動きが活発化する。関係者によると、鹿部は当初、大沼国定公園の全国的な知名度を生かした「大沼公園市」という名称を求めていたという。しかし、選考した3つにその名はなく、新しい市には新しい名称を―という観点から「大沼市」を推し、議会内部でも「申し合わせ事項」として意見の一致をみた。
一方、七飯町議会は町民アンケートで「七飯市」の回答が最も多かったことや、吸収合併という形式などを重視し、鹿部側の動きに真っ向から反発。複数の議員が鹿部の動きを察知したこともあり、流れに拍車がかかった。
そして4月12日、両町議会ではともに合併特別委が開かれる。鹿部側は松本豊勝町長から、同15日の法定協議会に提案する議案の説明を受けただけにとどまったが、七飯側では鹿部の動きへの対抗策として、出席18人による記名投票によって「七飯市」を決議するに至る。ある議員は「あの場にいては、賛成しなくてはならない雰囲気だった」と当時を振り返る。
その前日(11日)には、反議長派の議員数人が集まり、決議案提出に向けたシナリオ作りを進めていたという。水嶋町長は17日の会見で、「特別委の開会数分前に決議案の話を聞き、それはダメだと言った。だが、前段の議員だけのやりとりで、そうせざると得ないという空気が浸透してしまった」。松田議長も「その場にいなかったことが悔やんでも悔やみきれない」と嘆いた。
意見の集約方法に若干の柔軟性がある鹿部議会と違い、簡単に覆せない決議案を押し通した七飯議会とでは、衝突は明らか。さらに、人口の少ない鹿部は、アンケート結果の「数の力」で押し通そうとする七飯の姿勢に、不快感を隠そうとしなかった。
4月30日の法定協では、鹿部の佐藤友一町議会議長から事態打開に向け「決議について再考してほしい」と要望があり、七飯側の一部委員もこれに応じる姿勢を見せた。だが、6、7月に2度開かれた七飯の特別委では、名称について「決議済みであり、再考する必要はない」と結論付けてしまう。
この結果、水嶋町長、松田議長を軸に用意した「大沼市を受け入れる」という起死回生策も、不信感が頂点に達した鹿部の議員たちの感情には届かなかったと言えそうだ。
七飯町のある町民は言う。「議員は誰も責任を取ろうとしないし、肝心なところで逃げようとする。一度町長、議員ともに辞めて、もう一回町民の審判を仰げばいいんだ」―。最後まで町民不在のまま進んだ合併協議。両町の議員は、町民からの付託を受けて職務に当たっているということを、今回の事態を契機に再度、見つめ直すことが求められている。
提供 - 函館新聞社
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