木古内の合併協議白紙 根強い町民の不信感

update 2004/6/27 13:33

 木古内町が函館市に申し入れていた合併協議は25日、函館市が現時点では協議に応じられない意向を伝え、白紙となった。函館からの正式回答までの間、町は大きく揺れ動いた。飛び地合併、部課制の設置、助役の不在―。町政運営をめぐり右往左往する大森伊佐緒町長、町長の動きに歯止めをかけなかった議会。4月の町長選、助役の後任人事問題などにまつわる“確執となれあい”は払しょくできず、自治体存続の最終局面で、一枚岩になれないマチの気質が表面化した。

 函館との合併は、隣接する上磯、知内の両町に合併協議を断られ、大森町長が“ウルトラC”として出した切り札だった。しかし、その強引な手法は、マチに愛着を持つ町民の感情を置き去りにしてしまった。

 函館に申し入れた直後の3月に開かれた住民説明会。「どうして上磯、知内から断られたのか、その理由が知りたい」。多くの町民が持つ素朴な疑問に、町側から明確な答えは返ってこなかった。

 日ごろ町政への関心が薄い町民も、マチの行く末を案じ始めた。今月中旬の第2回定例町議会。大森町長から、助役欠員に伴う部課設置条例案が提出された。助役廃止から一転しての方針転換だ。普段は空席が目立つ傍聴席はびっしりと埋まり、議会の様子を映し出す庁舎1階のテレビには人だかりができた。

 しかし、紛糾した議論とは裏腹に、条例案は賛成多数であっけなく可決。詰め掛けた町民からは失笑とため息が漏れた。ある町民は「7対7で、議長裁決かと思った」。ある町職員も「町長と議員同士はああやって反目し合っているけど、3カ月もしたら元に戻るさ」と嘆いた。

 大森町長は25日、合併協議見送りを伝えに来た函館市幹部を見送った後、記者団に対し「今後のことは議会、町職員、町民とじっくり時間をかけて話し合いたい」と強調した。

 だが、ある町民は言う。「誰も本気で、まちづくりのことなんて考えていないのよ。自分のことばかりでね」―。町長、議会に対する町民の不信感は根強い。大森町長のリコール運動を模索する動きすらある。

 大森町長は2000年4月の選挙で、民間出身の若手として、当時の前助役を破り初当選。2期目のことし4月は無投票で再選した。衰退する町に町民が託したのは、新しい発想と若い行動力だった。

 町は現在、町営老人保健施設と公営住宅の合築、国保病院の改築、さらには下水道整備と数十億円単位のプロジェクトを抱えている。結果的にはこれらが各市町から合併協議を断られる原因にもなった。今後、見直しを迫られるのは必至で、建て直しに失敗すれば赤字再建団体に転落する危険性もはらんでいる。

 そんな中でのドタバタ劇。「なんも、一からやり直せばいいのにね」。木古内に住んで60年という女性は言う。合併してもしなくても、木古内という場所は必ず残る。考え方は異なっても、この町の進路をどうにかしなければという町民の思いは同じだ。

 町にいま必要なのは、各市町に合併協議を断られ続け、傷ついた町民のプライドの回復と、互いの不信感を消し去り、本気で町の将来を考えた対話ではなかろうか。

提供 - 函館新聞社



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