自衛隊員出発、家族ら無事祈る

update 2004/5/7 10:09

 第2次イラク復興支援群の派遣に向け、函館駐屯地の隊員が6日早朝、真駒内駐屯地へ出発。治安情勢の悪化が伝えられる中、函館駐屯地の45人は自衛官としての誇りを胸に、間もなく現地へと旅立つ。一方で、無事を願い、祈ることしかできない、見送る側の家族たち。それぞれが複雑な思いを抱えながら、この日を迎えた。

 ■隊員本人

 函館駐屯地の30代の男性隊員は「選ばれたのは光栄なこと。この日に向け、半年にわたり、訓練を積んできた。武器の使用も想定されるが、現時点では不安はない」と、心境を語った。

 男性が派遣の打診を受けたのは、昨年8月ごろ。以前から「海外の人たちのために力を貸してあげたい」という思いがあり、すぐに決断した。

 妻には今回のイラク戦争が発生した時点で、「いずれ自衛隊の派遣があるだろう。その時、自分は志願する」と伝えていた。妻は「頑張ってきてね」と答えたという。

 函館の隊員は大半が警備業務を担当する。「給水業務などに当たる隊員の盾になるのが任務。危険は十分、承知している。その分、函館の隊員の士気は高い」と話す。

 自衛のための戦闘も想定し、訓練を続けてきた。「何かあった場合のことを常に考えている。その場に遭遇すれば、適切に対処したい。とにかく淡々と職務をまっとうしたい」

 3カ月にわたる長期間の任務を前に、大型連休は、家族と一緒に温泉などへ出掛けた。現地では電話や電子メールで随時、家族と連絡が取れるが、荷物には、お守りや千羽鶴などに加え、妻の写真も入れた。

 「われわれはイラクの復興のため、任務を与えられた。そのことは現地の人たちも必ず、理解してくれると思う。あとはサマワで任務を遂行するだけ。その思いは隊員皆が同じだ」

 ■父親

 20代の男性隊員は今年の正月ごろ、両親に「(イラクへ)行くから」とだけ伝えた。父親は「頑張ってこい」とだけ答えた。家族は大型連休中も何度か顔を合わせたが、互いに派遣についての話題には触れず、普段通りに過ごした。

 父親は「危険については考えたらきりがない。これはどんな仕事でも同じ。いまは帰還後に、現地での活動について話を聞くのを心待ちにしている」と話した。

 ■元自衛官

 30代の元自衛官の男性は「現役時に命令があれば、行かざるを得なかった。たとえ、妻や子供があっても、そう判断していたと思う」と口にした。そして、「今回の派遣には、かつての同僚が含まれているだろう。全員の無事帰還を願うばかりだ」と、気遣っていた。

 ■近隣住民

 同駐屯地近郊の町会役員の男性は「自衛官になった以上、覚悟はできているはず。わたし個人としては疑問が残る派遣だが、命令があれば、動いて当然」と話す。その上で「やはり身近な話なだけに、いまは無事を祈るしかない」と言葉を選びながら語った。

 ■母親

 別の隊員の母親は、つい最近になって息子がイラクへ向かうことを知った。「息子が現地の危険について、しっかりと理解しているかは疑問。本人の決断である以上、親としては何も言えなかった」と振り返った。

 ただ、ほかのだれよりも息子の身を案じる母親として、「実際に何かが起きたら、どう受け止めたらいいのか。その答えは息子が無事に帰ってくるまで出ないだろう」とため息をついた。

提供 - 函館新聞社



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