道教大佐々木教授「北海道仏教史の研究」出版

update 2004/4/28 10:04

 道教育大函館校の佐々木馨教授(日本中世宗教史)がこのほど、中世から現代までの北海道宗教史を通観的にとらえた「北海道仏教史の研究」(北海道大学図書刊行会)を出版した。8冊目となる自著で、北海道民が長い歴史の中で、神に何を願い、仏に何を祈ってきたかを跡づけた「道民の信仰の軌跡」となっている。佐々木教授は「心の時代、心の教育と言われる現代で、歴史を振り返り、信仰する心や感謝する心を学び取るきっかけになれば」と話している。

 松前町史や函館市史などの自治体史編さん作業を通して、佐々木教授が25年間温めてきたテーマ。これまでの北海道史で本格的な研究、掘り起こしがほとんどなかった宗教史分野を体系的に論考し、国史の中に位置づけをした。

 北海道の開拓と開教が一体となって進められたことや、北海道は宗派間の対立や改宗が比較的少なかったことなどを、先住アイヌ民族と和人のかかわりの中で明らかにし、「民族と宗教」という国史全体のテーマにも迫っている。

 近現代の道民の宗教観や宗教同士の相克にも踏み込んでいるのも特徴。当時の銭亀沢高等小学校生徒の作文から、太平洋戦争祈願に果たした神社を中心とした「神様」の絶対性や、仏教の法華系新宗教に入会するに至った動機についての統計など、埋もれていた資料から史実を明らかにした。また、明治時代の乙部町の天理教信者が公安当局の監視を受けていた事実も紹介。既存の体制宗教に囲まれた中で、庶民が新宗教の信仰を保障されることがいかに難しかったかを説明している。

 このほか、鎌倉幕府の宗教政策など佐々木教授の専門分野で、最新の国史の研究成果を踏まえ、北海道や北東北での中世宗教史を明らかにした。

 出版に当たっては、日本学術振興会の平成15年度科学研究費補助金の適用を受けた。真宗大谷派函館別院の平等明信輪番(函館市仏教会会長)と郷土史家の須藤隆仙さん(称名寺住職、南北海道史研究会会長)が推薦書を作成、道内の寺院などから既に100冊ほどの注文があるという。

提供 - 函館新聞社



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