「海のマチ」実現へ向け“新函館市”の課題
update 2004/4/24 13:20
合併協定書に調印した函館市など渡島東部5市町村は、「海」をキーワードにした30万都市の誕生に向け、大きな一歩を踏み出した。ただ、任意合併協議会設置からわずか9カ月でのスピード調印。財政破たん寸前の4町村の事情が、合併協議を急がせた面は否めない。新市が描くバラ色の将来像の裏側に、課題は少なくなく、目指すべきマチづくりのあり方も問われそうだ。
「町村の発展なくして、函館の発展なし」―。23日に行われた合併協定調印式で、井上博司函館市長は年来の持論を展開した。カメラが取り囲む中、道内第1号の調印に終始笑顔を振りまく高橋はるみ知事。対照的に4町村の首長は祝いの席にもかかわらず、硬い表情を崩さなかった。
新「函館市」の将来像は「豊かな海が未来を拓(ひら)くふれあいとやさしさに包まれた世界都市」。函館市が押し進める「国際水産・海洋都市構想」と、4町村の主産業である漁業を組み合わせたのが特徴だ。
ただ、函館市が描く水族館構想など「非日常」の“夢”の部分がクローズアップされがちな一方、4町村が求める「日常」の漁業振興策は見えにくい。「海」というキーワードに求める姿のギャップに、町村側の不安や不満は残る。
加えて合併協議は、4町村の議員身分の問題以外はたんたんと進み、制度のほとんどは函館市に倣うことになった。救いを求める4町村から声は出しずらく、吸収合併という現実が見せた一面でもある。
一方、破たんした恵山町の第3セクター「恵山クリーンエネルギー開発」の負債処理や、市立函館病院の分院となる各自治体の国保病院の経営問題など、函館市にのしかかる負担は少なくない。札幌市を抜き、道内最大となる市議会議員の定数は、合併で効率化と逆行する典型例だ。
いずれにしても、引き返せないところまで来たのは確か。「住民が望むマチづくりに沿った建設計画を進めていくのは至難の業ではない」と井上市長は言い切る。負の遺産すら函館市が引き継ぐ「吸収合併」。将来に禍根を残さない新市の実現へ、井上市長の手腕が試される。
提供 - 函館新聞社
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