環状列石が見つかった森町、高速計画変更には多大な費用

update 2004/3/22 10:06

 【森】北海道縦貫自動車道の建設ルート上で、道内最大の環状列石(ストーンサークル)が見つかった森町が、遺跡の保存問題で揺れている。建設計画の変更などで、仮に保存が可能になった場合、整備や維持費などで、大きな負担が避けられないからだ。歴史的価値を認め、現状のままでの保存を求める学界。計画変更による事業費の拡大を懸念する日本道路公団。保存を要請しながらも、今後の維持管理については、新たな支援策を打ち出せない国や道。地方の財政が厳しさを増す中、森町の苦悩は続く。

 環状列石が見つかったのは、同道の落部インターチェンジ(IC)―森IC(ともに仮称)間の建設ルート上に位置する鷲ノ木5遺跡。環状列石は、昨年5月からの発掘調査で、石の列が3重に配置された、直径34―37メートルのだ円形で発見された。駒ケ岳の火山灰層の下から見つかったため、状態は良好。隣接地では竪穴墓10基も出土した。ともに縄文時代後期(約4000年前)のものとみられ、位置関係などから、当時の宗教感などを探る、貴重な発見として注目を集めている。

 道路建設を巡っては、同公団北海道支社が同遺跡のある台地を削り、道路を敷設する予定を立ててきたため、計画変更には消極的。仮に同遺跡の下にトンネルを通す工法に改めるなど、計画を大幅変更すれば、大きな負担増につながるためだ。

 同支社は「今後の協議次第」とした上で、「トンネル方式にすれば、新たにかかる費用は多大。同様にルートを変えても、多額の事業費がかかる。民営化を前に新たな経費増大は困難」と話す。

 これに対し、日本考古学協会や道考古学会は、道や町、同支社などへ現状のままでの保存を要請。同様に文化庁や道教委も、町に保存を要望している。

 ただ、保存が可能になった場合でも、実際に維持管理に当たる町にはさまざまな困難がつきまとう。まず、駒ケ岳の噴火災害への備えとして、縦貫道の建設は町にとっての長年の悲願。計画変更となれば、開通までの日程が大幅に遅れるのは確実だ。

 保存をしていく上での経費も無視できない。土地取得や整備・調査、維持管理など、国や道の助成はあるものの、町の負担は15年間の概算で約3億円。このほか、遺跡へつなぐ町道の建設は単独で行わなければならないなど、長年にわたる財政負担が避けられない。

 伊藤忠義教育長は「できることなら、遺跡を保存したいとは思う。ただ、災害を考えた場合、遺跡保護よりも高速道路を優先させたいといのが町と町教委の基本姿勢」と話す。その上で、遺跡の現状保存が決まった場合については、「小さな予算の中で大きな負担を強いられるのは確実。その場合には、国や道からの支援がなければ立ち行かない」としている。

 同遺跡の発掘調査は新年度、約2500平方メートルを対象に継続して行われる予定。この中で新たな発見があれば、保存問題はより大きな広がりをみせるだろう。

 地方財政が厳しさを増す中、遺跡保存を地元自治体への重荷として背負わせるのではなく、国や道などが、どこまで支援策を講じることができるのか。現時点で新たな支援策は、どこからも打ち出されていない。

提供 - 函館新聞社



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