七飯の歴史館にクロビイタヤの葉苗展示、道教大の浅利さん育てる

update 2004/3/14 13:08

 【七飯】七飯町本町の林野庁七飯旧第一苗畑敷地で昨秋確認された、絶滅危惧(ぐ)種のクロビイタヤの実生苗が、同町の歴史館で展示されている。北海道教育大学函館校非常勤講師の浅利政俊さんが、温室で育てた3年苗を周知のために持ち込んだ。同館では展示に合わせ、同敷地内の樹木分布図も作製、来館者に配布中。両者は今後も調査、研究を継続していく予定で、貴重なカエデの存在を広め、守る基盤づくりが着々と進んでいる。

 浅利さんと同館職員2人は昨年9月、江戸時代末期にスギ育苗の土地として開かれた同敷地の樹木を調査。スギ、トドマツ、ミズキなど樹木200本ほどの中に、クロビイタヤ6本を確認した。

 内訳は、直径71センチ高さ20・5メートルの巨木のほか、直径30―40センチ高さ18メートルの木が2本、直径5センチ高さ5メートルが1本、直径2センチ高さ2メートルの若木が2本。浅利さんはその巨木の根元に生えていた30センチほどの幼苗を持ち帰り、今年1月に室温25度の温室に入れ、通常よりも2カ月早く開葉させた。

 浅利さんは「七飯に貴重なクロビイタヤがあることをもっと広く知らせたい。地元の住民や春休みを迎える子どもたちに、実木の開葉前に葉の形状を見てほしい。そこから興味が芽生えれば」と展示を決めた。

 苗の育成と平行して、浅利さんらはクロビイタヤの適応状態や競争関係などを明らかにしようと、調査、測定を繰り返し、木の種類、数量を記した分布図を作製。1メートル四方のマス目に区切り、敷地内にある全部の木を書き込んだ。クロビイタヤの過去、現在、未来の姿を現場で学んでもらおうと、同館で配布することにした。

 調査に同行し、作図化した同館職員の福留太郎さんは、「巨木も幼木もあるので自然繁殖していると思われる。他の樹木よりも弱く、子孫を残せないとは考えられない。なぜ絶滅の危機にひんしているのか調査していきたい」と意気込む。

 今後、両者は協力しながら、葉、花、実、種の写真撮影といった通年調査や種の発芽条件などを調べるという。浅利さんは「道南の野山にクロビイタヤは本当に自生していないのか、自分でも知りたい。野山に行く人も事前に葉の形を覚え、興味を持って散策してほしい」と話している。

 実生苗、樹木分布図などの問い合わせは同歴史館66・2181。

 ◆クロビイタヤ カエデ科の落葉樹。葉は直径7―15センチの偏五角形で手のひらのように5つに分かれている。明治初期に北海道の理学博士・宮部金吾が日高で発見。環境省などによると、現在、国内では北海道の日高地方を中心に、青森、岩手、秋田、福島、長野の1道5県で確認されている。個体数は推定で約700本。同省では絶滅の危機にひんしている種としてレッドリストに登録している。

提供 - 函館新聞社



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