網野善彦さん死去、道南からも悼む声
update 2004/2/29 10:46
27日に76歳で亡くなった日本中世史研究の第一人者、網野善彦さんは、北方史研究にも精力を注いだ。上ノ国町の国指定史跡「勝山館」の調査、発掘研究に十数年携わり、商業や交易の側面から社会経済の発展を説いた。網野さんは2001年、元国立歴史民俗博物館館長で東大名誉教授の石井進さん(故人)と編著「北から見直す日本史」(大和書房)を出版した。石井さんに続いて鬼籍に入った網野さんを悼む声は、道南でも大きい。
網野さんや石井さんから学恩を受けた上ノ国町教委の松崎水穂主任学芸員(56)は「勝山館を日本中世史の中に位置づけていただいた。地域の豪族たちの城というとらえ方ではなく、この地域の人たちが広く本州の人たちと交易などを通しかかわっていたことも強調された」と説明する。
網野さんは、従来からのアイヌ民族と和人の対立図式的な見方に疑問を呈した。その後「夷王山墳墓郡からアイヌの墓や儀式道具が出土し、網野先生の指摘が足の下から証明された」と同主任学芸員は指摘する。
「網野史学」とも呼ばれる体系の一端について、網野さんと交流のあった道教育大函館校の佐々木馨教授(日本中世宗教史)は「日本史の中に北海道の中世があると言った初めての人ではないか」と語る。網野さんはアイヌ民族と和人との共存や対立の中で、生きた北海道中世史を描いた。
同教授はさらに「複眼的な研究で、本州の文献史学と北方の中世考古学の整合性を保ちながら結び付け、北海道にも中世があることを証明した。歴史学者と言うより歴史家。石井、網野両氏を失った上ノ国町や学界の衝撃は大きい」と悼んでいる。
提供 - 函館新聞社
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