ニュース細見/大学合否情報提供問題/謝礼とプライバシー問題視

update 2004/2/2 10:47

 全国の高校で、大学の合否情報を受験生らに無断で大手予備校などに提供し、謝礼を受け取っていた事実が問題となっている。道教委が道内公立272高を対象に進めている調査が、今週中にもまとまる見通しだが、情報提供については、函館市内を含めて進学校を中心に数多くの高校が行っているのが実情だ。大学難易度を示す資料作成にデータが欲しい業者と、資料を基に進路指導に当たる学校。背景にはそうした受験産業を支える構図も見えてくる。

 「資料としては大変価値のあるものだと思う。情報提供には抵抗がない」。函館市内にある進学校の教頭はそう話した。同校では数年前から情報提供を行っており、図書券で謝礼を受け取っている。

 受験者本人や父母に無断で情報を提供していたことや謝礼の受け取りについては、今後、対応をとるが、情報提供そのものは「生徒が進路を実現させるために必要なもの」として続ける。

 問題とされているのは2点。情報提供の際に、個人の実名がわかることによるプライバシー問題と、情報提供の見返りとして謝礼を受け取っていること。

 道教委は各高校に対し「誤解を受けるような金品の受け取りなどはしないように指導している」とし、「今回のようなことは是正していきたい」と説明。実名がわかるような情報提供の仕方については、調査の結果を受けてからとなるが、慎重な対応を求めることになりそうだ。

 函館市教委でも、市立2校を対象に調査を進めているが、謝礼受け取りの事実を確認。高校側は謝礼を参考図書購入などに充てていたとしているが、市教委は道教委の対応に合わせながら、指導をしていくことにしている。

 なぜ、情報提供は必要なのか。その理由は受験制度とのかかわりが深い。全国大手予備校によると、各高校への情報提供は、大学入試センター試験が採用された十数年前から本格的に始まった。各大学の全国的なレベルを示すための目安が必要となったという。

 そのために、各予備校などでは、それぞれが主催した模試に、学校単位で申し込んだ高校に対して、大学合否の情報提供を要請。模試結果と提供されたデータを併せて統計処理して資料を作成、説明会などを通じて、各高校の進路担当者などに配布するのが、当たり前になっていた。

 全国大手予備校では、謝礼については「各都道府県の教育委員会の指導に従っていきたい」とし、プライバシーについて、道内大手予備校は「正直、名前は関係がないので、今後は(提供の際に)生徒の了解を取ってもらいたい」。いずれも問題とされた点については対応策を取るが、情報提供を受けること自体は続けていく考えだ。

 市内の高校の進路担当教諭も「校内成績でどの位置にいれば、どこの大学に入れるということが昔はわかったが、今はセンター試験などもあってどうなるかはわからない。全国のレベルを知る必要もあるし、予備校とは互いに持ちつ持たれつのところがある」と話す。

 試験ではボーダーライン上の受験生は1、2点で合否が違ってくるだけに道内大手予備校は「作成している資料は有用だと思う」。全国大手予備校でも「大学の難易度などを示す資料は、その年によってトレンドもあるし必要」と話した。

 それぞれ違いはあるが、各予備校などが、資料作成にかける経費は相当額になるという。一人でも多くの“顧客”を確保するには信頼を得ることが必要で、資料作成にはそうした背景がある。同時に道内大手予備校は「こうした資料作成ができるところもないし、代わって作るところもない」と内情を話している。

提供 - 函館新聞社



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