函館国際水産・海洋都市構想、着々進む基盤整備
update 2004/1/2 11:13
函館市や北大、民間企業など産学官連携で始動した「函館国際水産・海洋都市構想」は、関連する事例を含めた基盤整備が着々と進んでいる。昨年は企業・大学が共同研究を行う海藻技術研究所が開設された。また、同構想に関連する「マリン・フロンティア科学技術研究特区」の認定、さらには文部科学省所管の「都市エリア産学官連携促進事業」が早速、取り組みを始めるなど、積極的な動きが目立った。今年はこうした実績をさらに積み上げ、新世紀の産業興しにつながる土壌づくりを進めることが求められている。
同構想は昨年3月、函館経済活性化のカンフル剤として成案化された。2選を果たした井上博司市長の肝いりで推進し、同6月には産学官による推進組織「函館国際水産・海洋都市構想推進協議会」(高野洋蔵会長)が発足。これまでに先進地視察や市民フォーラムを開き、構想の周知を図っている。
構想の主要施策は〈1〉水産・海洋に関する学術・研究機関の集積〈2〉地域と学術・研究機関の連携〈3〉観光と学術・研究の融合〈4〉水産・海洋と市民生活の調和―の大きく4点。
いずれも中長期的な取り組みが必要だが、すでに実績を上げている施策もあり、今年は1年目の実績に厚みを加え、構想推進の基盤整備に向けた取り組みが必要だ。
各主要施策の具体的な方向性や今後の課題を整理してみる。
〈1〉については、水産・海洋に関する国際研究機関事務局・支部の誘致をはじめ、調査船などの寄港基地化を推進する。
〈2〉に関しては、昨年6月に共和コンクリート(本社・札幌)が函館市弁天町に海藻技術研究所「アルガテック キョウワ」をオープン。構想実現への核を握る北大水産学部との共同研究の中で「ホンダワラ類」などの海藻の造成技術開発を行い、ニシンやハタハタなどの産卵を促す場所の造成研究に着手した。今年は「アルガテック―」に続く第2、第3の企業誘致が至上命題となるのは間違いない。
〈3〉は函館が有する観光資源の有効活用に加え、市青函連絡船記念館摩周丸の活用や、井上市長が検討を進めている、水族館などのファミリーレクリエーション構想が関連してくる。「ファミリー―」はこれまでに、緑の島など2、3の場所が建設地候補として挙がっており、市は今年3月までに基本構想をまとめる方針だ。
〈4〉は、西部地区の研究施設や商店・飲食店のウインドーを活用した「まちかど水族館」などに、中・長期的に取り組む。
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同構想推進のカギを握るのが、昨年8月に国から認定を受けた「マリン・フロンティア科学技術研究特区」。北大水産学部の研究施設を民間企業が使用する際の条件緩和や使用手続きの迅速化、さらには同学部と公立はこだて未来大学で活動する外国人研究者の在留期間延長(3年→5年)などが特例措置として認められた。
特区の具体的な活動事例は現在のところないが、北大水産学部が建設を進めている共同研究用の中核施設となる「マリン・フロンティア研究棟」は、昨年12月までに施設がほぼ完成した。1月にも供用開始の運びで、企業と同大研究者との共同開発を進める環境が徐々に整いつつある。
また、函館近海だけで捕れ、高値で取引されるガゴメコンブに関する開発、研究を進める「都市エリア産学官連携促進事業」も、昨年12月から本格的な取り組みがスタート。水産系廃棄物として処理されているホタテガイの殻を用いた人工の藻場礁で、ガゴメを育てる研究が恵山町で行われている。これらの研究成果を軸に、将来的には漁業者の安定収入に加え、新産業創出に結び付ける考えだ。
今年12月に函館市と合併する予定の戸井、恵山、椴法華、南茅部の4町村の基幹産業は漁業。函館も同様で、漁業・水産業に付加価値を付け、観光とも連動した新産業をいかにして創出するか。構想2年目に求められる基盤整備は、漁業と観光が融和した「新・函館市」の将来像をも占っている。
提供 - 函館新聞社
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