世界最古の漆装飾品など焼損した南茅部の火災から1年

update 2003/12/28 11:49

 【南茅部】世界最古といわれる漆の装飾品などが焼損した南茅部町埋蔵文化財調査団事務所(同町大船575)の火災から28日で、1年がたつ。町埋蔵文化財調査室は、焼け跡から回収した数万点の遺物の洗浄、選別作業を依然として続けている。調査室職員の中には、1年がたつ今、張りつめていた気持ちがようやくほぐれるのと同時に、あらためてショックを受ける人もいるといい、火災がもたらした影響は消えていない。

 火災は、2002年12月28日午後11時40分ごろに発生。同事務所から出火し、木造平屋建て約600平方メートルが全焼した。調査途中にあった約9000年前のものとみられる世界最古の漆の装飾品が焼損したほか、約6500年前のものとされる子供の手足をかたどった土版など、約7万点が被害に遭った。

 同事務所は築3年ほどで、火災防止のためオール電化にしていた。出火原因について、森署などの捜査が続けられているが、原因解明につながるような有力な手掛かりは得られていない。

 同町は「縄文の里」として町おこしを行っており、発掘作業に携わった町民も多い。1年の区切りが目前に迫り、火災の夜を思い出して不安な気持ちになっている人も少なくないという。阿部千春室長は「ショックが消えない人の、心のケアも考えていきたい」との思いを語る。

 ただ、同町では今年9月までに、国内最大級の馬蹄(てい)形盛土を持つ集落の存在を確認。高橋はるみ知事も「遺跡の全容を知りたい」と期待を示し、調査室職員や発掘作業に関わる町民らの間にも徐々に笑顔が戻りつつある。火災が「教訓」として過去の事になる日も遠くはなさそうだ。(後藤泰良)

提供 - 函館新聞社



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